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♀/卒業式/男教師 ページ2

桜の花が咲きかけている前庭が窓から見え、
廊下や下から喜びと別れを惜しむ声が幽かに届く。

生徒数、教員数が少ない我が校…
母校はそれ相応に、もしくはそれ以下に小さい。

今は卒業式の片付けに追われる先生が大半で
この小さな職員室は珍しく空になる。日直の先生は別だが。

「卒業おめでとうございます、Aさん」

「ありがとうございます、先生」

先生は私に微笑し、卒業を祝う。

「また寂しくなりますねぇ〜」

「すぐ、新入生が入って賑わいますよ」

のんびりとした口調、丁寧な言葉遣い。
決して壊してくれないの壁が今日は一段と邪魔だ。

「今日も、本心を教えてくれないんですね」

「当たり前ですよ」

残念です、と苦笑いを零す。

3年間、毎日のように本心を…好きな人を知ろうとしたが、
やはり最後まで分からなかったなー。本当、残念。

「しかし、その制服姿も見納めと思うと、感慨深いですね」

すごく悔しいが、
少し寂しそうに見えるその表情からも本心は読み取れない。

「3年も付きまとった私を忘れませんか?」

意地の悪い質問だっただろう。
けれど、私はその答えが知りたい。

「忘れませんよ。初めて3年も付きまとわれたんですから」

今までのことを思い出しているのか、小さく笑う。
それにつられ、私も笑った。



「先生のことが好きです」


丁度、外で突風が吹いたらしく桜の枝が揺れたのが見える。
まだ結構人が残っているようで、女子の悲鳴が聞こえた。

先生はというと、
私の告白に驚くことなく静かに微笑していた。

これは、振られるかはぐらかされるか、
その2択しかないだろう。他は望みが薄い。

自己完結し、先生からそっと目を逸らした。

重たい沈黙が職員室に充ちる。



「離任式にAさん、貴女が来てくだされば、返答いたします」

にっこり、と効果音がつくような笑顔でそう返された。


まだ期待の道は残っているみたいだ。


緩む頬を必死で抑える。
今からもう離任式が楽しみで仕方ない。








____大人の余裕

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作者名:秋花火 | 作成日時:2015年12月3日 20時

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