【薄桜鬼】〜美男剣士は、実は女？〜肆

百九十二話　そういう一面が… ページ43

―――――……

―――…


ある日のこと。

巡察を終え屯所に帰還してすぐ
Aは伊東に捕まった。


伊東「こちらのかすていら…
　甘過ぎず上品な口当たりで早乙女くんの
　好みの味と思いましたの」


A「確かに…美味しいです」


いつの間にかAの好みを
すっかり熟知している。

彼のその執念は侮れない。


A「頂いてばかりで心苦しいです…
　参謀の好物は何でしょうか」


伊東「あら、私は良いですのよ！
　上司たるもの奢って頂くわけにはいきません。
　これは私の趣味ですわ」


A「はあ……お心遣い感謝します」


伊東「おほほっ！(いつ見てもお可愛らしい…)
　ところで……そちらはどうなさったの」


視線の先にあるAの手には
鈴のついた髪結い紐が握られている。


A「巡察中に顔見知りの女の子に
　良ければ使ってください、と渡されて…」


伊東「さすが早乙女くん！
　髪結い紐でしたら普段使いされますもの。
　ずっとお側にいたい想いが伝わりますわ」


A「そう、ですか…？……なるほど…」


彼に指摘されるまで、考えもしなかった。


伊東「よろしければ私に
　その髪を結わせて頂けませんこと」


A「そんなことを参謀にお任せするなど…」


伊東「いえ！是非に！！」


A「よ…よろしくお願いします」


その勢いに圧倒されて頷く他無かった。

するっとAが髪をほどくと
伊東が感嘆の吐息をこぼす。


伊東「なんて艶やかなお髪でしょう…！
　私も気を遣ってはいますが、
　この絹糸のような艶には遠く及びませんわ」


A「恐縮です…」


そのまま伊東が楽しげに
自前の櫛で髪を丁寧に梳かし結い上げる。

くすぐったい感覚に亡き母を思い出し、
千鶴にもやってあげたい…と
Aは密かに思い、口元を緩めた。


伊東「はいっ！出来ましたわ」


A「ありがとうございます」


頭を下げると、紐についた鈴がチリンと鳴る。


伊東「よくお似合いですわね。
　音を奏でるのがまた可愛らしい」


A「華美過ぎて日常使いは出来ません…」


伊東「大切に持つだけで良いですのよ。
　たまにつけて差し上げれば
　その方はなお嬉しいでしょうねぇ」


乙女心を代弁する様に感心する。


A「参謀は…女人の心情にも寄り添える
　細やかな感性をお持ちですね」


若干の苦手意識はあるものの
Aは伊東のそんな一面に好感を持ち
どこか親しみを覚えた。



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


続く

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斎藤一　風呂上がりの無防備な恰好で出くわすと説教＆襟巻でぐるぐる巻きにされる！なにゆえ？！

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