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有岡先生 ページ47

侑李サイド

ポロポロと溢れてくる涙を、大ちゃん先生が親指でぬぐったり、ハンカチを当ててくれたりした。

有岡先生「久しぶりだな、侑李の泣き顔見るの」

侑李「……っ、だっでぇ、せん、せぇがぁ」

有岡先生「そうだな、俺のせいだもんな。でも、やっぱり泣かないと。いっぱい泣いて、後でそのぶん笑ってよ、な?」

僕は、コクッと頷いた。

いつもの大ちゃん先生は、こんな声出さないのに。

いつもより優しくて、温かい声が、僕の涙腺を刺激してくる。

侑李「けぇとぉ、けえとぉ……っ!」

有岡先生「そうだ、そうやって、心の中にある気持ちを全部吐き出すんだ」

侑李「ふぇっ、けえと、もっと、一緒が、よかったぁ」

大ちゃん先生は僕を抱き締めてくれた。

温かい体温が、僕を包む。

僕は、大ちゃん先生の胸のなかで、ずっと泣いていた。

何分間も泣きじゃくる僕に、大ちゃん先生は何も言わずに、ただ優しく背中を撫でていてくれた。

侑李「せんせ……ありがとっ……」

少し落ち着いてきたから、大ちゃん先生にそう伝えた。

有岡先生「どういたしまして。大丈夫?」

侑李「……うん」

有岡先生「じゃ、あとちょっとしたら部屋戻ろーね? 涼介、たぶん検査終わってるから」

侑李「……うん」

有岡先生「侑李の泣き顔、可愛かったから、優しくしちゃったよ、もー」

その声は、いつも通りの大ちゃん先生の声に戻っていた。

おちゃらけたような明るい声。

でも、どこか落ち着く声。

僕の大好きな、大ちゃん先生の声だった。

侑李「嘘でしょ?」

有岡先生「ほんとだよ、可愛かった」

違うよ、そうじゃなくて。

先生の優しさは、僕が可愛かったんじゃなくて、誰にでも見せる、本当の優しさでしょ?

涼介が泣いていても、さっきみたいに「可愛かったから優しくしちゃったよ」とか言って、優しくするんでしょ?

僕はわかるよ。だってそれが大ちゃん先生だもん。

侑李「先生って、損な性格だよね」

でも僕も素直じゃないから、ちょっと嫌な言い方をしてみる。

有岡先生「は、はい?」

侑李「でも優しくて、みんなに好かれる性格。ありがとう、大ちゃん先生」

有岡先生「ほめてる、それ? なんか、よくわからないけど、ありがとう」

侑李「ほめてるよ」

僕が先生より先に席を立って教室を出ると、大ちゃん先生は走って追いかけてきた。

侑李「先生、来るの?」

有岡先生「涼介にも、会いたくなったの」

先生の横顔は、少し笑っていて、優しさで溢れていた。

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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