戻ってくる? ページ44
裕翔サイド
岡本圭人くんという男の子の存在は、伊野尾先生から聞いていた。
涼介と侑李が大泣きしたということも、岡本圭人くんがどんな子だったのかも、全く想像がつかない。
俺は、生きていて良かったなぁ、とか。
母さんがドナーになれるHLAっていうやつで良かったなぁ、とか。
廊下を歩きながら、ぼんやりと、そんなことを考えていた。
2人の病室の目の前まで来たとき、俺はどうするべきなのかを考えた。
いつも通りに、なにも知らない設定で。
心のなかで何度もその言葉を繰り返し、病室に入る。
明らかに無理をしている2人のために、俺は気づいていないふりをした。
無理矢理でも笑えている侑李と、落ち着いている涼介に、少し安心する。
でも、やっぱり、俺だけじゃ何もできなくて。
大人に頼らなければ、無理なことだってあるよな。
そう思ったとき、1人の先生の顔が頭をよぎった。
有岡先生なら……。
有岡先生なら、全ての事情を知っているはずだ。
それでいて、医者じゃないから、いつでも会えるはず。
きっと、涼介と侑李に寄り添いながらも、俺の気持ちもわかってくれて。
2人を笑顔にできるんじゃないか。
そんな期待が胸のなかで膨らんでいた。
だから、院内学級に行こうよと言ってみた。
この決断が正しかったのかはわからない。
でも、いずれはっきりすることだから。
裕翔「明日、院内学級、やってるんじゃないかな? よかったらさ、行こうよ。 まあ、いつでもいいんだけどね」
前もって調べておいた院内学級の日程を頭に浮かべてからそう言った。
涼介「明日でいいよ」
侑李「僕もいいよぉ!」
その声も元気も、相変わらず作り物だけど、俺を安心させてくれる。
2人に作り物じゃない、本物の笑顔になってもらうためにも。
有岡先生、どうか明日はお願いします。
心のなかで、そうお願いしておいた。
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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時