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残酷な運命(死ネタになります) ページ42

侑李サイド

もう、何がなんだかわからなかった。

頭が混乱して、体が震えて。

何で涼介は落ち着いていられるんだろう。

薮ちゃん先生が、圭人の体に針を指したとき、回りの音がきこえなくなって、時間がとまって見えた。

圭人の顔が、だんだんいつもの顔に近づいてきて、そのおかげで回りの音も聞こえてきた。

ピッピッピッ、ピ―――――。

薮ちゃん先生が、心電図モニターの電源をきった。

圭人が、死んじゃった……。

涼介「これで、良かったの、かな?」

薮先生「ああ、良かったんだよ。圭人、笑ってるだろ?」

侑李「……うん」

さっきまで苦しそうだったのに、今はもう、笑っていた。

薮先生「俺は、いろんな人の死を見てきた。死ぬ瞬間ってのは、すごく苦しいはずなんだ。いろんな後悔があって、いろんな感情がごちゃ混ぜになって。だから、多くの人は苦しそうに、悲しそうに、苦悶の表情で死んでいく」

今までは泣いてなかった涼介の頬に、一筋の涙が伝った。

薮先生「でもな、本当にたまに、圭人みたいに笑って死んでいく人もいるんだ。そういう人たちは、苦しみよりも大きな何かがあるんだと思う。人生に後悔をせずに、胸を張って死んでいくってのは、簡単なことではないと思う」

涼介の、しゃくりあげるような嗚咽が聞こえてくる。

薮先生「圭人はさ、きっと、お前らに感謝しながら死んでったんだよ。ちょっとだけしか一緒にいられなくてもさ、圭人は、お前らのこと、ずっと考えてたんだと思う」

侑李「僕、たちは……、けい、けいとに……、ちょっと、だけ、でも……、思い出、……つく、れたの?」

薮先生「うん、お前らは、いちばんいい選択をしたと思うよ」

いちばんいい、選択?

僕は、なにをすればいいのか、全くわからなかった。

それでも、できていたのかな?

声には出さずに、心のなかで圭人に語りかける。

――――――――そうだと、いいな。

圭人のために何かできたなら、僕だって、うれしいよ。

僕は、生きるから。

僕のためじゃなくて、圭人のために、涼介のために、必死になって生きるから。

ありがとう、圭人。

僕も、笑って死ねるように、後悔なく死ねるように、頑張ってみるよ。

薮先生「帰ろっか。2人が倒れちゃうよ」

僕たちは頷いて、ゆっくりと歩き始める。

何でみんな、僕たちをおいて先に逝っちゃうのだろう?

神様は、意地悪だ。大嫌いだ。

でも、神様にすがるしかないんだ。

神様、涼介だけは、奪わないでよ―――――――

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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