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残酷な運命(死ネタになります) ページ41

涼介サイド

今日もICUに来ていた。

こうしてICUに来るのは、今日で6度目だった。

涼介「圭人、涼介だよ」

侑李「侑李も、ここにいるよ」

圭人の手を握ると、まだ少しだけ握り返してくれる。

圭人「……た……ん……す」

侑李「たんす?」

侑李がそう聞くと、俺の手を握る力が少し強くなった。

涼介「たんすって、病室の、だよね?」

今度は、ぎゅっとしっかり握ってくる。

侑李「見ればいいの? 大丈夫。ちゃんと見るから」

――――――ピッピッピ

心電図モニターの電子音が変わり、上の部分が赤く光っている。

ナースコールを押すよりも早く、薮先生が来た。

でも、薮先生は、圭人になにもしなかった。

薮先生「もう、治せない。涼介、侑李。人の死を見るのが怖かったら、今のうちに逃げなさい」

侑李「僕たちは、もう逃げないって決めたの! 最期まで、一緒にいたい」

涼介「逃げたら、カッコ悪いじゃんか。圭人にそんな姿見せられないよ」

薮先生「そっか。2人はさ、圭人が苦しみながらもう少し長く生きるのと、圭人が苦しまずに今……死んじゃうのと、どっちを選ぶ?」

そんなこと言われても、わかんないよ。

だって、両方嫌だもん。

でも、苦しまずに生きるという選択肢はないんだ。

侑李「もう少し長く生きるって、どれくらい?」

薮先生「人によるけど、だいたい10分くらい」

涼介「ほんとにさ、苦しまずに死ねるの?」

それが、聞きたかった。

先生がやったわけでもないのに、本当に苦しまずに死ねるっていうのか。

少しでも苦しいまま今すぐに死んでしまうのなら、それは圭人にとっても、俺たちにとっても最悪な結果だと思った。

薮先生「うん、薬をたくさん打ってね、少しの間は楽になって生きられる。でも、その時間が終わったら、急に臓器が止まって死んじゃう。死んじゃうけど、圭人は、死ぬことに気づかないまま、楽に亡くなれる」

だんだん心拍数が下がってきている圭人を見ると、圭人は苦悶の表情を浮かべている。

涼介「楽に、してあげて」

薮先生「侑李は?」

侑李「……わ、かん、……なぃ、よ……。でも、……りよ……すけ……が、……」

涼介「俺が決めて、いいの?」

涙が次々と溢れ、話すことも難しそうな侑李にそう聞くと、侑李はこくっとうなずいた。

薮先生「じゃあ、やるからな」

薮先生は、圭人の体に注射器を入れた。

圭人の顔が、だんだん安らかなものへと変わっていく。

これで良かったんだ。

自分にそう言い聞かせた。

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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