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双子の絆(ゆめあ様 リクエストです) ページ31

侑李サイド

涼介の泣き声が聞こえた。

「ごめんな」と謝る伊野ちゃん先生の声も。

病室に、息をするのも憚られるほどの重苦しい空気が流れる。

僕は、重い瞼をゆっくりと開けた。

涼介が「侑李!」と叫ぶ。

その声が頭に響き、僕は顔をしかめる。

涼介は「ごめんな」と言って、頭を撫でてくれた。

伊野尾先生「俺たちが誰だかわかる?」

侑李「涼介と伊野ちゃん先生」

伊野尾先生「何があったかわかる?」

侑李「………わかんない」

伊野尾先生「倒れたのは、覚えてる?」

侑李「………覚えて、ない」

ああ、そうか、と僕は理解する。

このガンガンする頭も、ずっとめまいがするのも。

僕、倒れたのか……。

だから、涼介がこんな悲しそうな顔をしているのか。

侑李「ごめんなさい」

涼介「なんで謝るの?」

侑李「迷惑かけたから……」

涼介「迷惑じゃない。しょうがないよ」

優しく微笑んだ涼介の顔が、急にぼやけた。

それと同時に、気持ち悪くなってくる。

侑李「う、うぅっ……」

僕は目を閉じて、口を抑えた。

伊野尾先生「気持ち悪い?」

侑李「……ん」

伊野ちゃん先生は、袋を出してくれた。

僕は、それを口に当てる。

侑李「ケホッ……コホッ、コホッ……」

何度か咳をしたら、胃液が食道をのぼってきた。

鼻がツンと刺激される。

侑李「う、……つぅ……」

うまく息ができなくなる。

目には、知らない間に涙がたまっていた。

それがちょっとした拍子にポロリと溢れる。

涼介「辛いな。大丈夫、俺がいるからな」

結局、2、3分ほど咳き込んでいると、徐々に落ち着いてきた。

伊野尾先生「もう、大丈夫?」

侑李「……うん」

伊野尾先生「口の中、気持ち悪いでしょ?」

伊野ちゃん先生はそう言って、トイレに連れていってくれる。

涼介も僕の背中を撫でたり、手を繋いだりして、ついてきてくれた。

伊野ちゃん先生から口をゆすぐための水をもらう。

コップの中の水がなくなるまで口をゆすいでいると、伊野ちゃん先生が「前の薬にする?」と聞いてきた。

突然聞かれたから、なんと答えればいいのか分からなかった。

伊野尾先生「辛いだろ。やめてもいいぞ」

侑李「効果、ないの?」

伊野尾先生「効果はあるけど……」

僕は「じゃあやる!」と大きな声で言った。

侑李「やるよ、僕、頑張る」

伊野尾先生「そっか、頑張るか」

僕は笑って頷いた。

涼介も、笑ってくれた。

大丈夫。きっと、なんとかなる。

だって涼介がいてくれるから――

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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