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母親の記憶(ここな様 リクエストです) ページ26

涼介サイド

ドアを開けると、ベッドの上で体育座りをしている侑李が目に入った。

裕翔は、この部屋にはいなかった。

侑李は、2、3回瞬きをして、ニコッと笑った。

でも、俺は震える体を押さえるのに必死だった。

侑李はベッドから降りて、こっちに歩いてきた。

侑李は「おかえり」といつもどうりに接してくれた。

それが侑李の優しさであることは、ずっと前から知っていた。

でも今は、侑李が本当はどう思っているのかが気になってしょうがなかった。

侑李「涼介、今さ、僕がなに考えてるか、気になってるんでしょ」

図星を突かれて、俺はなにも言えなくなる。

侑李「わかるもん、双子だから。伝わってくるもん。だから、教えてあげるよ」

侑李は、大きく息を吸った。

そして、

「僕はね、涼介が戻ってきてくれて、うれしいよ。僕はね、涼介のこと、裏切らないよ。約束、ちゃんと守る。絶対に、絶対にだよ。だからね、涼介も、僕のこと、好きになって!」

大きな声で、そう言ってくれた。

侑李は、俺に抱きついてくる。

でも、体が拒否してしまった。

俺より小さな侑李は、俺が手で軽く押しただけで後ろに倒れてしまう。

侑李の口から、「うっ……」と声が漏れる。

だけど侑李は。

もう1度、俺に抱きつく。

俺はまた、侑李を倒してしまう。

ごめん、ごめんと心の中で何度も謝っているのに、体は心と反対のことをしてしまう。

俺に倒される度に、侑李は「ううっ……」と弱々しい声を漏らし、立ち上がる。

ばか、なんで来るんだよ。俺は、お前を、傷つけてるんだぞ。何度来たって、俺の体は、お前を倒すんだぞ。

その心の声が通じてしまったのか、侑李は倒れて、立ち上がらなかった。

侑李「僕ね、諦めないもん。何度でも、抱きついてやる。傷ついたって、何度も繰り返してやる。涼介が、抱き締めてくれるまで、絶対……絶対、諦めないもん」

侑李は、涙を流しながら、そう言った。

そしてまた、立ち上がって、俺に抱きつく。

俺は、もう耐えられなかった。

涼介「なんで来るんだよ。やめろよ。お前が怪我するぞ」

侑李「涼介が、好きだから!」

そう言って侑李は俺に飛びついた。

俺は、反抗できなかった。

体は言うことを聞いてくれるようになった。

侑李「だから、ちゃんと戻ってきてくれて、ありがとうって思ってる」

涼介「ゆ、うり」

俺の心を治してくれたのは、

先生でも、母さんでもなくて。

こんなにも近くにいる、大好きな

侑李だった――――――

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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