狂い者よ、引き金を引け【d!】 (ページ9)

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一部始終が映った映像とAが予測した内容を確認した桃瀬は、最後の質問を行った。

「最後の質問だ。行動理由はわかったが、なぜお前は犯罪係数を下げようとした？システムの通りに動かなかったのはなぜだ」

この一係全員が気になっていたこと。二手に分かれて早々にシビュラ世代と揶揄された真衣Aがシビュラの出した数値に背く、興味を持たないわけがなかった。

「…女性は怖い経験をした被害者です。なのに執行されるのは違うと思いました。それに…もし仮に史刀執行官が追跡し、執行したとします。でも」

係数の上昇は一係、そして自分のせい、ということを後から気付いたら。
Aは続ける。

「史刀執行官に心理的負荷が大きくかかってしまう可能性があり、それを避けたかった。以上２つが理由です」
「俺は…執行官だというのにか?」
「史刀執行官、貴方は同じ人間で」

「いいか真衣監視官」

話を遮り、桃瀬は冷めた目でAを見下ろした。

「執行官を同じ人間だと思うな。執行官は、シビュラシステムの測定で犯罪係数が期待値を超えた人格破綻者だ。本来ならば潜在犯として隔離されるべきところを、唯一許された社会活動として同じ犯罪者を狩ってるだけだ」

アイツらはただの猟犬でしかない
最後にそう吐き捨て彼はオフィスから出て行った。

「〜♪」

桃瀬のデスクの前から動かないAをよそに、独特の低い鼻歌を流しながらコーヒーに角砂糖が六つ落ちていく。

「なぁ黄更木!食堂に新しいメニューできたから今日の夜一緒に食いに行こ!」
「や、や〜希さん…ちょっとそれは…」

黒綺だけではなく、メンバーも。桃瀬の発言など全く気にせず各々が作業や談笑に戻っていた。
まず桃瀬の発言を聞いていたのかもわからない…というほどに。

「Aさん、気を落とさないでくださいね」

隣にいる緑は優しく微笑みかける。単独で追いかけた理由を知った火爛も「俺としては助かった。ありがとう」とぶっきらぼうながらも声をかけ、デスクに戻っていった。

しかし何を言われようとカバーするように声をかけられても、Aの表情が変わることはない。
心は波を立てず、白が白のままであるだけ。

「大丈夫です。あの考えは…シビュラシステムに則ている」

そう言ったAの瞳は下を向いたままだった。