狂い者よ、引き金を引け【d!】 (ページ8)

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では。デスクに座る桃瀬は鋭い目つきでAを見据えた。
彼のデスクの前に立つAのサイドには緑と火爛が置かれ、あたかも嘘か否か見定める様になっている。

「なぁ桃瀬監視官、流石にやり過ぎやない?Aちゃん可哀想なんだけど」
「いいや龍ニキ、緑先生は明らかにAのサポートする気だゾ」
「黒綺執行官、静かにしているように」

へいへい、と黒綺は手をヒラヒラさせ事務作業が映るデスクへ向き直した。

「…こほん。では真衣監視官、なぜ昨日の任務において黒綺執行官を単独で四階の窓なんかに行かせた」
「止めようとした段階で黒綺執行官は作ってもらったというグローブで既に壁を渡り歩いてました。グローブの性能を知らないため、無闇に戻す事はリスクであり…かつ黒綺執行官は窓を破ろうとする対象の行動予測に確信を持っていました」

桃瀬の鋭い視線が黒綺に移動される。これは新人でかつ研修も無い状態のAが止めることなど不可能すぎると判断されていた。
オフィスの殆どが、首輪が付いていようとリードを持たれてない黒綺を初任務で割り振られたAに同情の気持ちを持つ。

「いい勉強になっただろう新人」
「はい。窓ガラスを破って部屋に侵入した点は解せませんでしたが」
「それが一番の正解だと思います、Aさん」

おかげでこんな事になっている訳ですから。緑は笑顔のまま黒綺の方へ顔を向けると、弧を描く瞼の隙間から瞳を覗かせた。
これは後で黒綺は怒られるだろう。反対側に座っていた火爛は理解する。

「では黒綺執行官にも報告書を書かせる。次、なぜ一人で女性の追跡を行った」
「…理由は自分の中で行った心理考察によるものですので、100%の正解ではありません。ですが」

彼女の犯罪係数を下げるためです。
Aは続けて説明を始めた。

「まずはこちらを確認ください。2人での追跡時と、自分1人での追跡時に残しておいた、映像データです」

リングから２つの映像を映し、桃瀬に提示した。

「ただ逃げてるだけでは?」
「いいえ、顔を振り向ける頻度と表情を見てください」
「…そういうことですか」

緑は気付いたようで、Aの初勤務とは思えない観察眼に感心した。同時に互いが似ていると感じる。

「自分が1人で追跡してから、彼女は振り向きが減り表情も変化しています」
「はぇー、全く違う」
「そしてこの映像をご覧ください」

そう言って見せたのは女性が気絶するまでの一部始終だった。