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一方で現在進行形で赤い液体が広がっていく現場にて。
黒綺のダイナミックエントリーが華麗に決まり、犯人は隙をつかれ桃瀬により執行。
しかし…

「黒綺ぃ…」
「初仕事にはあっちの女性の方がいいと思ってな。初めから身体を内側から破裂させるなんて荷が重すぎるだろ。なんなら、執行官殿がまずそう言った配置をされてませんか?」

今も昔も変わらず邪悪な笑みをするやつだ。桃瀬は楽しそうにしている黒綺を睨みつける。
まぁそれも黒綺にとっては面白いことであるためノーダメージ。
ククと喉を鳴らし、ビルと他のビル群を繋ぐ屋外通路へ視線を移動させた。

「あの鬼と同じスピードでついていける身体能力か」

窓から見える通路では女性へと距離を詰める2人が走っている。

「むしろ新人の方が芸達者だな」

通路を走る火爛は流石の速力なのだが、Aは通路に置かれた荷物から荷物へ飛び移り、距離が開くタイミングで鉄柱をまるで鉄棒で回転するように火爛の元まで飛んで同じペースを保っていた。
まるで旧時代に流行ったスポーツ『パルクール』のよう。

これは廃棄区画での仕事ならより一層光る、黒綺は目を細めた。
視点は切り替わり追跡するAと

「いやぁ!来ないでよぉ‼︎」

悲鳴と係数上昇が止まることはない。
逃げ続ける女性は通路に立てかけてあった棚を倒し、奥のビルへと消えていってしまった。

「史刀執行官は桃瀬監視官が来るまで待機」

Aの通る声があたりに響く。

「おい監視官!」

Aは棚を軽く飛び越えて女性を追いかけ闇の中に消えた。火爛の声も聞かずに。

「…ちっ」

通信でA以外の全員に連絡が入る。黒綺は楽しそうにすぐ向かうと言って通信を切った。

「おい待て黒綺執行官!…あいっつ……『火爛執行官、黒綺執行官と合流して直ちに真衣監視官を追いかけろ!』」
『了解』

桃瀬はふと半年前のことを思い出す。キレた頭と行動力を備えた相棒のような監視官のことを。
悪と潜在犯、犯罪係数が期待値を超えた対象を裁くという『正義』側とは思い難い性格と見た目のくせして、民間人と執行官を大事に思い守ることに命をかけていたいつかの姿。

「…久々に見た。黒綺のあの表情」
「戻ってええのかわからんぞ?お前は仕事数少なかったから知らんだけで、そこの元相棒はメンタル薬どんだけ噛み砕いてたか」
「起きたなら俺らも行くぞ。女性の向かった先は倉庫になっている。上から狙う」

2人の執行官の返事と共に3人も部屋を後にした。

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作者名:あんべべ | 作成日時:2023年1月16日 4時

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