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答えが出ず、右手で銃を構えながら左手のリングに声をかけた。
黒綺はシビュラ世代だからか?と茶々を入れてくる。しかし当の彼もさほど歳が離れているというわけでないため同じくシビュラ世代である。
『シビュラ世代』
シビュラシステム導入後に生まれ育った若年層がそう呼ばれている。彼らはシステムが導くままに選択を享受するため、自ら考えて主張する能力が低く、また彼らは該当行動をよしとしない。
高齢者や自ら選択をしたい黒綺にとっては皮肉で使われる言葉だ。
『新人、カメラ機能を共有して見ておけ。…にしても希先生の作った発明品は素晴らしいな』
「また勝手に作ってもらったの?桃瀬監視官が怒るよ?」
Aの隣で火爛は何やってるんだか…と呆れた声を出す。
これはいつものことなのだろうとAは理解した。
「監視官、見てても良いけど構えだけは外すな」
「はい」
「…シビュラ世代」
『ク、火爛にまで言われるとはな……来るぞ』
一層低くなった声に反応する。部屋の前では黄更木のハンドサインを視認し身を屈めた。
バン!とドアが開かれ、桃瀬班が突入する。
「動くな!公安刑事課だ!」
「あ、ああぁぁぁぁぁああ!!!」
4階に響く狂ったような叫び声。
閉められていたカーテンが開き、カメラには同じ人間とは思い難い顔をした男が映った。
犯罪係数も300まで跳ね上がっている。
逃げ場がないとわかった直後、持っていたナイフと拳で窓を破壊しようとし始めたではないか。
「なるほど」
黒綺がわざわざ外から窓に行った理由がようやくわかった。犯罪係数が跳ね上がると執行は免れないというのに、こんな事をしでかすらしい。
『そういうことだ新人‼︎』
次の瞬間、黒綺は窓を蹴破った。
カメラ共有が切られガラスの割れる音が廊下にまで聞こえてくる。
「あのバカども…。犯罪係数考えろよ…」
りょーちゃんフリーズするじゃんか。
火爛は舌打ちをした。
「それってどういう」
青い光か部屋から漏れ出た後、何かが弾け噴き出る音が聞こえた。
「きゃぁぁぁあ!!」
女性の悲鳴。この場で『女性』は拉致被害者のみである。
待機していた二人が部屋に近寄ると、黄更木を突き飛ばして真っ赤なラグジェリー姿の女性は逃げ出していった。
「火爛、真衣監視官!追いかけろ!」
「了解しました」
「了解」
Aが黄更木の横を通り過ぎた時、彼の瞳は恐怖の色をしていた。
(なんで…)
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作者名:あんべべ | 作成日時:2023年1月16日 4時