47個目 side少女 ページ49
「A嬢。いる?」
「あ、はい。います」
慌てて扉を開けるとオビさんが立っていた。少し窮屈だったのか襟のボタンだけ外されている。私は自分の部屋にオビさんを招き入れた。
「どうしたんですか?」
私もオビさんに話す事があったので好都合だったが、気になってオビさんに質問する。
「いや、さっき温室でA嬢何か言いかけてたでしょ?それが気になってね、聞きに来た」
にこやかに笑うオビさんはそう言った。
「そうだったんですね。私も今行こうと思ってて…」
「そっか。で、話ってなんだい?」
「地下通路では迷惑を掛けてしまってすみませんでした。ちゃんと周りを確認しないで判断してしまって」
私はぺこりと頭を下げた。頭を下げてしまったから見えはしないけど、オビさんが少し狼狽えているような気がした。
「しょうがないよ。あんなだったら俺だって安心するし、何より姫と王子だったから別にそこまで気負わなくても…」
「でも…」
私が頭を上げると、オビさんははぁっとため息をつき、手をゆっくり上げた。私は思わずビクリと体を震わせてしまった。そんな中オビさんは私の頭に手を置いた。
「大丈夫だから。A嬢は少し敏感になりすぎ。もうちょっと落ち着いていいから」
怒られると思っていた私は唖然としてしまった。
「…ぶたないんですか?」
「はぁ?何言ってんの。する訳ないでしょうが」
「そう、ですよね…」
…そうだった。何を勘違いしてたんだろうか。…この人は、オビさんはあの人達みたいな人じゃない。クラリネスの人達は私が今まで出会ってきた人達とは違う。今までそんな当たり前のことにも気づけなかった。
私は息を吐き出すと真っ直ぐオビさんを見る。
「オビさん、私頑張ります」
オビさんはそんな私にびっくりしたのか少し目を見開いたがすぐににっこり笑ってくれた。
「うん、頑張りな」
そう言って笑うオビさんを見て胸がほわほわと暖かくなった。
78人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時