39個目 side少女 ページ41
「はー…か 風が気持ちいいですね、ラジ王子」
「うむ」
部屋を出て2人はそんな事仰った。全然気持ちよさそうには見えないが、先程の部屋にいた時の無言だった時よりはまだいいのだろうか…?
「白雪どの…せっかく来たのだ。部屋にいるよりこのまま城内を案内しようと思うのだが」
「え?ラジ王子がですか?はいぜひ!」
「ではちょっと待っていてくれたまえ」
そう言うとラジ王子は私達を残してどこかに行かれてしまった。
「苦戦してますね、お嬢さん」
ラジ王子が見えなくなった途端、オビさんは白雪さんに話し掛ける。
確かに白雪さんを見てて思うが、あまり楽しそうではない。白雪さんは誰とでも仲良くなれると勝手に思っていたがそうではないらしい。
「でも、室内にいるより城内動いてる方がいいかも」
「俺としては城下に行きたいねえ。下町の酒場とかさ」
「あ 私の家酒場だったよ」
「え?!」
オビさんの言葉に予想外の返事をした白雪さん。白雪さんが酒場…意外だ。
「そーなの?!」
「驚きです…」
「亡くなった祖父母がやってたんだ」
「酒場…勝手に薬屋か薬草園主かと思ってたよ」
オビさんも私と同じ事を思ったらしく白雪さんにそう言った。
「薬草は私育ててたけど」
「そういえば…前に山生まれだって話してたよね」
「うん、小さい頃はまだ山の方にいたらしいんだけど…あんまり覚えてなくて」
「そうなんですね…」
「へーえ…それ主達は知ってるのかい?」
「今身内がいない事はね。薬室長も知ってる」
「どの辺?お嬢さんのいた家」
「えーっと、方向としてはあっち…でもさすがに…見えないんだよね」
白雪さんが家があったであろう場所を悲しげな表情で見つめた。やはり実家がないというのはとても悲しい事なんだろう。…残念ながら私には分からないけど…
「そっか。ま、今度この国に来た時は下町にも山にも好きに行けるでしょ」
オビさんがそんな白雪さんに明るい言葉を掛けた。白雪さんはその言葉を聞き嬉しそうに笑った。…私も気の利いた言葉が言えたら良かったのに。自分の不甲斐なさを心の中で呪った。
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作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時