3つ目 side少女 ページ5
「それで貴方は一体どこから来たの?」
木々さんは私に疑問を投げかけた。
「…分かりません。ここが何処かも分からないんです」
「分からないって…君の家はどこなのか?」
今度はミツヒデさんが私に聞く。
「私に家はありません。小さい頃に攫われて以来自分がどこで生まれたのかを思い出せません」
「そんな…」
「…おまえ、名をなんと言う」
白雪さんが口を押さえながら1歩引くと同時にゼンさんは私に1歩近づいた。
「…ないです。名前で呼ばれた事なんて1度もありませんでした」
「…逃げてきたのか」
その言葉に体が震え出した。その震えを必至に抑えて質問に答える。
「は、い…」
ゼンさんとの会話で皆さんも私がどういう人間かは分かったらしい。皆さんの視線が痛い…
「すみません。助けて頂いたのに私にはお金がありません。私を売っていただければ少しではありますが、お金を返せると思うので…」
すみませんと頭を下げる。
またどこかに売られるんだろうなと自分で言っといて何だがそんな思いが頭をよぎる。
せめてあまり殴られない所がいいな…と思っていると頭にポンと何かが置かれた。
「そんな事するわけないだろう」
ゼンさんが私の頭を撫でる。そんな事されたのは初めてで体が固まってしまった。
「悪いが、お金には困ってないんだ。それよりお前ここで働かないか?」
「え…」
「おい!ゼン!」
驚きで声を出すもののそれはミツヒデさんの声で全てかき消されてしまった。
「勝手にそんな事決めちゃダメだろ!」
「それじゃあお前はこの子を見殺しにでもするって言うのか?こんな子が外をふらふら歩いてたらすぐにどっかに捕まるぞ」
「そっそれは…!」
「決まりだな」
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作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時