20個目 side白雪 ページ22
巳早との話が終わり少しの間部屋を出て廊下に立つことにした私達。そろりと隣に立っているゼンを見る。
「ゼン、顔怖いよ」
「そうか?」
ゼンの顔は眉間にしわがよっていて見るからに不機嫌そうだった。
「そりゃ主も不機嫌になるってお嬢さん」
「オビ」
「話が本当ならその謎の美少年はあんたを連れ去ろうと企んでるんだからさ」
「ゼンさん、あの巳早さんって男性はお帰り願えないんですか?」
オビに続き、Aはゼンにそう提案していた。Aがそんな事を言うなんて少し意外だけど、Aもそれだけ巳早を敵対視してるのかな…
「………ああ。あいつしか相手の顔を知らんからな」
ゼンは無言の後にとても不服そうにそう言った。
「美少年のね」
「…他に情報もないしな」
「美少年ってことしかね」
ゼンの言うことに茶々を入れるオビにゼンの堪忍袋の緒がプツンと切れた。
「やかましいぞおまえさっきから!そこはどうだっていいんだよ」
「やだな、手がかりですって手がかり」
2人の言い合いを少しうるさく感じる。
さっき巳早は私を連れ去ると言っていた。
…連れ…去る……この言葉が私の心に重くのしかかる。
「白雪」
「はいっ!?」
いきなりゼンに名を呼ばれ、少し大きな声で返事をしてしまった。
「ー…まだ何もわからんが1人で考えるなよ。不安になったら構わず言え」
ゼンのそのたわいない一言に少し心が軽くなった気がした。
「ゼン!白雪!」
後ろから私とゼンを呼ぶ大きな声が聞こえた。くるりと後ろを振り向くと少し神妙な顔をしたミツヒデさんが帰ってきた。
「ミツヒデさん」
「どうした。あの男何かしでかしたか」
「いや…巳早は大人しく下がった。元貴族だけあって城内での振る舞いは心得てるらしい…」
ゼンが目を釣りあげそう言ったが巳早の事ではないらしい。それじゃあ何があったのかな?
「そうじゃなくて別件だ。ゼンと白雪。今晩、イザナ様の所へ行くようにと伝令があった」
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作者名:あす | 作成日時:2018年12月1日 17時