MISSING TWINs Ⅲ (ページ5)

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何も出来ない自分に気づいてから少しの時が過ぎ、社会人となった私と大我くんを見守り続けていた。
目の前には純白のドレスを身に纏った私が居る。

「似合うー？」

「うん。すげー綺麗」

来月に式を控えた２人は、注文していたドレスの合わせに来ていた。
まだ少しの手直しがあるらしく、それを持ち帰るのは来週に。
昔と変わらず、手を繋いで歩いている姿は微笑ましい。
けれど、私はそれを不安いっぱいで眺めていた。
２４歳、私が事故に遇った年の結婚式。
どうか何事もないようにと祈った。

ー…なら…る…あ…って…ー

ーえ？ー

初めて耳に届いたその声は…。
徐々に人の姿を象り始めている白い影が、２人の傍で囁いていた。
はっきりとは聞こえないその言葉には、確かな温もりが感じられた。

ー大我、お兄ちゃん…？ー

ー…大我…？…な…？ー

こちらに、おそらく顔の部分だけ向けた影は不思議そうに私を見ていたのだと思う。
傾いた小さな頭がそう思わせた。

ーお兄ちゃん、なんでしょ？ー

縦に振られた頭は所々霧散し、白い影は初めて私に向かってきた。
お腹の辺りに靄のような体に体当たりをされて、この世界で初めて触れる事の出来た存在を抱き締めた。
小さな小さなお兄ちゃん。
この世界で、何度も危なっかしい私を包むように護り続けていたお兄ちゃん。
優しい、とても優しい温もりを感じた気がして、知れず溢れた涙は影に感謝の雨を降らせた。

お兄ちゃんはいつでも私を見守ってくれている。
時にただぼんやりと、時にそっと手を差し伸べて。
体を失ってもずっと傍で、運の無い私が少しでも穏やかに過ごせるようにと尽力してくれる。
どこの世界でもお兄ちゃんは私に甘いのだと知った。

“私の”お兄ちゃんに会いたいと、心からそう思った。