MISSING TWINs Ⅲ (ページ37)

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「あのさ…」

年上男性なのに可愛らしい笑顔の大我くんに撃沈していた私が落ち着いた頃、静かに大我くんが口を開いた。
沈んだ表情をしていて、何事かと身構えた。

「ちゃんと助けられなくてごめん」

そう頭を下げられた。
謝罪の意味が分からず、気持ちだけ首を傾げて向けられた旋毛を眺める。

「アイツの言うこと聞いてれば、芹がこんな風に大怪我することなかったのに…」

「あいつ？」

「信じてもらえないかもしれないけど…どこか別の所の俺が、芹を助けようって乗っ取りに来た」

「さすがですね。京本ワールド」

「ベッド揺らそうか？」

「心の底から謝罪しますごめんなさい信じますー」

「本気ではやらないよ」

笑いながら言われてどこまでだろうかと勘繰った素振りを見せる。
ちょっとだけ苦笑した大我くんは話を続けた。

物心ついた頃には既に“２人”だった事。
もう１人の方が耳聡く私の泣き声を聞きつけた事。
自分も守りたいと思った事。

あの日、助けるために会場をすぐに飛び出した事。
ファンに囲まれてしまい間に合わなかった事。
転がって動かない“２人”を見て取り乱した事を話す時は、気恥ずかしそうに笑った。

「守ろうと思ったのに、俺すげーカッコ悪い」

そんな事ないよと返したいのに、その言葉を大我くんは受け取ってはくれないだろうと口を閉ざしてただ見つめていた。

「せめて、芹の目が覚めるまでそばに居たくて、ご両親にムチャ言ってこうしてずっと待ってた」

「…お待たせしました…」

「本当にな。もう少しで………」

眉を寄せて苦々しい表情を浮かべた大我くんに、視線だけで先を促した。
こくりと覚悟を決めたように喉を上下させて息を飲んでから、幾度か開閉させた後に

「もう少しで…アイツが、俺の体で…」

“芹を殺そうとした”

そう細く吐き出した。
私を見れないのか、大好きなキラキラした瞳を瞼の奥に隠して。

「…ありがとう」

「え？」

意味が分からないと言わんばかりに困惑した顔がこちらに向く。

「だって、殺されそうになってたの“助けて”くれたんでしょう？“守って”くれたんでしょう？だから“ありがとう”」

ぎゅうっと寄せられた眉間。
噛み締められた唇。
大好きな瞳は私に向いたまま、後悔と安堵で滲んでいった。

「俺…」

「大我くん“ありがとう”」

痛いのを我慢しながらそっと右手を大我くんの左手に重ねて、私は笑って見せた。