MISSING TWINs Ⅲ (ページ34)

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「うん。意識は眠ってたと思えないくらいにハッキリしているみたいだ。一応確認のために、明日頭部ＣＴを撮ろう」

「それ、移動しますよね…」

「大丈夫だよ。ベッドごと移動するからね」

「やーですー。振動が痛いんですー」

「じゃあ歩くかい？」

「ムリでーす！ムリですー！！」

はははと医師は快活に笑うけれど、私にとっては死活問題です。
死にたくありません。
看護師はチラチラこちらの様子を窺ってるし、隣に居る人はこちらが所在無くなるくらいに優しい微笑みで私をじっと見てくるし、心からなんだこれは！と声を大にしたい。
と言うか、何で居るのだろうか。
仕事はどうしたと言うのでしょうか。
現在ＰＭ２：００である。

「それでは、何かあったら呼んでください」

「ありがとうございました」

にこやかに頭を下げるその姿に

「身内か！」

そうつっこんでしまった私は悪くない。
お腹から声を出したらまた身悶える羽目になった。

「…」

「…」

「……」

「……」

「………」

「………」

「何も訊かないんだ？」

「何からきいたらいい？」

「んー…何が１番気になる？」

「あの看護師に言い寄られませんでしたか？」

「それ！？」

嬉しさを隠すことなく微笑んでいた大我くんがお腹を押さえて笑った。
目の前で何の違和感もなく笑う姿に、本当にここは私の世界なのだろうかと甚だ疑問である。

「少しだけ話しかけられたけど、俺には芹が居るからって言ったら引き下がったよ」

「……つかぬことをお伺いしますが」

「なに？」

「初対面？ですよねー？」

「…ううん。ずーっと昔、一緒に迷子になったよ。芹は俺の手を握ってずっと泣いてた。守ってあげなくちゃ！ってもえたね」

「えぇー？？」

そんな記憶無いよ。
いったいいつの話なんだ？と首を傾げれば、目を細めた大我くんが「東京駅」と告げた。

ずーっと昔、の、東京駅。
固形物が水に溶けるようにゆっくりゆっくり記憶の糸を紐解いていく。
アレでもないコレでもないと悶々している私と、答えが出るのをひたすらに待ち続ける笑顔の大我くん。
すみません、分かりません。
とは言い出し難い雰囲気だ。

「東京駅…迷子…うーん、いつの事だろう…」

基本的に１人で出掛ければ１００％迷子になれる奇跡の方向音痴と言われたのは、紛れもなく私です。

「そっか…」と大我くんは悲しげに眉を下げた。