MISSING TWINs Ⅲ (ページ14)

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ーじゃあ、もう１人の私は“思いに呑まれてる”の？ー

ーああ、心残りが強すぎる…いや、これでは語弊があるな。執着が過ぎると“思いに呑まれ”、悪魂へと変わる可能性も出てくるー

ーあくだま？ー

ー俗に言う悪霊と言う物だな。我々は生霊が堕ちる事を悪魂、死霊が堕ちる事を悪霊と呼んでいる。昨夜看護師を襲ったのは生霊の気配だった。まだ堕ちきってはいないが、時間の問題と言った所だろうー

ー芹は堕ちない！ー

ー時間の問題だ…ー

ー俺がそんなことさせない！ー

そう言ってお兄ちゃんは開け放たれた窓から外へと飛び出していってしまった。
結城のおじいちゃんは重い息を１つ吐き出した。

ーまっすぐでとても優しい子だな、彼はー

ー本当は一緒に産まれるはずだったんだけど、お兄ちゃんは大きくなれなくて、死んじゃった…ずっと、ここの私の事守ってくれてたんだよねー…ー

ーそうか…ー

目を細めたおじいちゃんは

ー君も３本の矢に巻き込まれて可哀想に…ー

意味の分からない事を口にしながら私の頭を優しく撫でた。
その真意を訊ねてもはぐらかされ、いつかは分かる事だと曇り始めた空を見上げた。

ー嵐が来るな…奏多はそろそろ帰る頃だろうー

その夜、今年１番の嵐が病院を襲った。
ガタガタと鳴る窓を横目に、私は私を見下ろした。