色戀、召しませ。 (ページ45)

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隆二さん、店員さん、私。

静かにテーブルに置かれていく料理。

店員さんがその場を離れて暫くして私は「迷惑とか思ってなかったですよ」と呟いた。

「でも無視したりバーって帰ったりしたじゃん。なのに手繋ごうとしたり、俺も意味分かんなかった」

「あれは……だから……色々あったんです私の中で。詳しくは言いたくないんですけど」

「え？何？色々？」

「ニヤニヤしながら聞かないでもらえますか！」

「してないって！」

いや、笑ってんじゃん！私の涙とあの日の飲み代返して下さい！！

「ニヤニヤはしてないんだけどさー………今日も、みんなの集まりなら誘いやすいかなって。二人で会おうよとか…………何かね。でも断られたらもう止めとこと思ってた」

私にとっても彼にとっても綱渡りのような電話だったんだな………。

どちら側から切っても、二人は二度と会うことはなかった。

「出て良かった………」

心の声が口を伝って漏れてしまったことが恥ずかしくて、私は誤魔化すように、料理をバクバク食べた。

「サラダしか食べません。みたいな人なのかと思ってた」

「ううん、全然。私、外食でサラダ食べる理由が分からないんですよね」

そんなもん家で食べられるだろと思ってしまう。

「肉！って感じ？」

「はい、鶏！って感じです」

「鶏！」

隆二さんは一頻り笑ったあと「あっ」と言ってバッグから冊子のようなものを取り出した。

「えーっと、どこのページだったかな……………あった！」

テーブルに広げられたそれには、私が載っていた。

「あ！これ！どこで見付けたんですか！？」

数ヵ月前、小さなタウン誌にうちの事務所が掲載されることになって私がインタビューされたことがあった。

顔写真、生年月日、出身地、趣味…………簡単なプロフィールも添えられている。

「この号に知り合いの店が紹介されてて、見てみよーって読んでたら、あ！って」

「そうなんですねー、いやぁ恥ずかしいんで見ないでもらえますか…………」

「……………見てやろ。めっちゃ見てやろ」

「やめて！！」