色戀、召しませ。 (ページ35)

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Expectation. ページ35

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号泣の夜の翌日、家に帰りついてすぐゆかりから電話があった。

終電を逃したから泊めて欲しいと言われて、私は二つ返事でOKした。

「さっきまで秀香と飲んでたんだよ」

「またぁ？私も行きたかったー！あの居酒屋でしょー？」

「そう！あ、ごめん、紅茶湿気ってるわ。緑茶にする？」

「うん！」

ソファにダラッと横になったゆかりはテーブル置いたお茶を飲むために少しだけ身体を起こした。

「A………大丈夫？」

「うん、大丈夫」

私は今朝、頭を切り換えようと決意した。

このまま痛くてやばい女になるのが嫌だった。

「あ！こないだね、あの橋のとこ行っちゃったんだよ。別れ話したとこ。灰皿のさぁ」

「なに？感傷に浸りに？」

「いや、ふらっと」

「…………私、結婚するんだと思ってたなぁ。向こうの親の事とか無視してさー。二人で生きていこうよ！とか言いそうな彼氏だったじゃん」

「そう？そんなこと言えない人だったと思うなぁ」

あのタイプの優しさを持つ人は、親より彼女を選ぶなんて出来なかったと思う。

「去年の誕生日にもらったあの指輪どうした？いいやつだったよね～」

「あれは………別れ話の帰りに、どうしよっかなぁって手の中で転がしてたら川に落ちた」

「えぇぇぇえ！！」

ゆかりはガバッと起き上がってテーブルをバンバン叩いた。

「川ってあの川でしょ！？今から網持ってさらいに行こうかな」

「さらって指輪見つけたらどうすんの？」

「売るんだよ」

人の思い出を現金化しようとする女がここにいます。

「お風呂たまったら先に入って良いよ」

「えー、私が先？Aんちのお風呂寒いんだよー」

「ごめんね！古い一軒家だからね！」

「でもあの陶器のバスタブは良いよね」

「でしょ？」