悟る ページ37
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……しばらくの間、ほの暗い闇の中をさ迷っていたように思う。
アイツの声も、なんの音も聞こえない暗闇の中で一人。
ただなんとなく、目覚めたら全てを悟ってしまう気がして。
______私はそれが、恐ろしいほどに怖かった。
『……、っ』
「!……おいっ、A!!聞こえるかッ!?」
『……まき、ちゃん?』
眩しいくらいの光の中でぼんやりとする視界に映ったのは、心配そうにこちらを覗き込む真希ちゃんの顔だった。
その奥に見えるのは、見覚えのない白い天井。
……ああ、そうか。私、任務の後に倒れて
『ここは?』
「高専の医務室。オマエ、丸一日寝てたんだよ。私とパンダが任務終わりに硝子さんのとこ寄ってたら、いきなり棘が血塗れのオマエ抱えてきてビビったわ」
『狗巻くんが……』
「棘があんなに焦ってるとこなんか、私らでも早々見ねーよ」
どうやら、狗巻くんには悪いことをしてしまったようだ。
彼が焦るのも当たり前。いきなり隣で吐血して倒れたなんて、普通ならトラウマものの光景だろう。
後で謝っておかないと。そう考えているうちにも、未だに残る胸騒ぎは、ザワザワと音を立てて私の体を襲ってくる。
「とりあえず、私はアイツらにオマエが目覚めたこと伝えてくっから、まだ寝てろ」
『ありがと。お手数おかけします』
「別に良いよ、かしこまんな」
真希ちゃんはそれだけ言い残すと、医務室の扉から出て行った。
一人残された部屋の中で、あの時痛んだ心臓を抑えるように手で覆う。
やっぱりおかしい。さっきから、何も感じない。
呪力はあるんだ。あの忌々しい、トゲを含んだような力。
でも、いくら神経を研ぎ澄ませたところで、私の中にアイツの気配を感じることができない。
……嫌な冷や汗が、私の額を伝う。
________コンコンッ
「A、入るよ」
軽いノック音の後に開かれた扉から、いつもの目隠しをつけた五条先生が重苦しい面持ちのままこちらにやってきた。
その意味を、私は理解できないんじゃなくて、したくなかったんだ。
「ごめん……先ずは、それだけ言わせて」
『っ……それじゃあ先生のこと、嫌いになっちゃうよ』
「……それで君の気が済むのなら、僕は別に構わないさ」
先生はどこか歯痒そうな顔をしながら、泣き崩れた私をただ黙って見据えていた。
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いか焼き - さ い こ お です!この話マジですこ… (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
すみれちゃん - 続編決定…!ありがとうございます泣 (2022年2月27日 1時) (レス) @page50 id: 1871179020 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - タイトルに目を惹かれ読んでみたらめちゃくちゃ面白かったです……!今後どうなるかとても楽しみ……!更新頑張ってください!! (2022年2月8日 7時) (レス) id: 382d4af167 (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ - 更新してくださる事が嬉しいですっ!これからも、作者さんのペースで頑張って下さい! (2022年2月3日 23時) (レス) @page27 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
mithukoaaa0306(プロフ) - 面白すぎて一気に読んでしまいました! (2022年1月30日 2時) (レス) @page8 id: 96b8b42efc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月29日 15時