化け物 ページ7
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「ああやはり、光は生で感じるに限るなあ……!」
高らかと掲げられた声と共に、ビリビリと無惨な音を立てて破かれていく黄色のパーカー。
ヒラヒラと、まるで花吹雪のように布は散り散りになって飛んでいく。
……初めてだった。こんなにも何かを見て、足が竦むほど恐怖したのは。
「呪霊の肉などつまらんッ。人は、女はどこだッ!」
悠仁ではない、別の何者かの声に私はピクリと肩を揺らす。
空気が揺れ、辺りがひんやりと凍りつくように感じるのは、この目の前の化け物が放つプレッシャーか何かが関係しているのだろうか。
「クフッ……なんだ、居るではないか。こんな近くに、それも大層愛らしい小娘がッ」
ギロリと、鋭い眼差しが私を狙うように向けられる。
愛らしいなんて言葉はきっと、お世辞のお世辞だ。
こちらを睨む真っ赤な瞳は、今にも私に爪を立てようと逸らさない。
一歩、また一歩。化け物はヒタヒタと足音を立ててこちらに近付いてくる。
「どうした小娘、俺が恐ろしいか?良い良いッ!その恐怖に満ちた青白い顔はたまらなく美しいぞ」
顔に残る悠仁の面影。それでも目の前でニタニタと歯をむき出して笑う男は全くの別人で、頭の中がこんがらがる。
怯えて動かない体のせいでこちらに伸びる手を拒むことは出来ず、頬に触れた生暖かい手の感覚に身の毛がよだつのが分かった。
男はそのまま己の意のままに、私の首元にするりと手を動かす。
大きな手が、私の細く華奢な首をまとわりつくように包み込んだ。
「……オマエ、随分風変りな匂いをしているな。一体何者だ?」
『っ知らない……あんたこそ、誰なのッ』
「オマエにそれを告げた所で、どうとなる話では無い。しかし、威勢が良いのは気に入った」
私の顔に自らの顔を近付け、男は上機嫌な声色でそう言うと、私の首にすべらせていた手を退けた。
威圧感から解放された私は、首元を抑えて軽く咳き込む。
しかし、コホコホと乾いた声を上げていたのも束の間、次の瞬間には再び男の手が私の頬へと戻って来た。
両手で顔を包まれ、グイッと無理矢理顔を上げられる。
「精々喚け、小娘よ」
______近付く顔に、触れる唇。
少しだけ開いた口の隙間から、よく分からない「何か」が流れ込んで来たことだけを知った。
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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月22日 17時