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灰は黒い ページ49

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……昔から、私は俗に言う冷めた人間だった。


愛とか情とか。そういう綺麗事に陶酔する自分が苦手で、人を好きになることもなるべく避けて生きてきたように思う。


それでも「家族」という存在は、私に愛することの温かみを教えてくれた。






『祖父が死んで気付いたんですよ。私には、誰かを守るための力も無いんだって』






そう思うと、寂しさと虚しさが私の心の中を渦巻いた。


でもようやく知ったのだ。それは誰かのためにありたいという私自身の弱さが生み出した、建前だったのだと。


力が無いならつければ良い。知りたいなら学べば良い。


結局何か行動しなければ、自分は一生このまま何もできずに死んでいくことになる。それだけは絶対にごめんだ。






『私が死んで、この力が宿儺の元に戻ったとして。何でこうなったんだろうとか、死ぬ事が怖いだとか、そんなくだらないことを言っている暇があったら、私はコイツを呪いたいッ……!』








__________“ケヒッ……気に入った”





頭の中にあいつの艶かしい声が響いた時、ビルの方から何かモヤッとした気配が落ちてくることに気が付いた。


気になり上を見上げれば、上空から鶯色をした毛むくじゃらの呪霊が落ちてくるのが見える。






「祓います」

「待って」






すかさず臨戦態勢に入ろうとした伏黒くんに向けて、五条先生は間髪入れずに制止の声をかける。


すると次の瞬間、呪霊の体内から太いトゲのような物が何本も伸びてきた。

それと同時に、苦しむ呪霊の体は黒い灰となり風にさらわれるよう流れて行く。


……辺りに感じていた禍々しい気配は、その一瞬で跡形もなく消え去っていた。






「あっちもちゃんとイカれてたみたいだね」






一連の流れを見ていた五条先生は、私の時と同じようにどこか嬉しそうな声でそう言ってのける。


どうやら二人の実地試験は、無事に幕を閉じたらしい。



イカれていることが大前提な仕事なんて正直不安で仕方がないけれど、やると決めたからには私もこちら側に染まりきる覚悟で挑もう。



決して死に際で引き下がることが無いように、このイカれた世界の黒色と混ざり合いながら歩んで行こうじゃないか。







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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年1月22日 17時

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