指先と生け贄【両面宿儺】

心は割れ物 ページ45

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「飲み込んだぁ？特急呪物をォ！？」






それからしばらく経つと、話の流れは“知識の無さすぎる”悠仁の話題へと逸れていった。


伏黒くんが例の出来事……つまり悠仁が宿儺の指を飲み込んでしまったことを伝えると、野薔薇ちゃんは顔を青くして叫んだ。

彼女の中では、それが相当ショッキングな事実だったのだろう。


そもそも、呪物を飲み込むという行為そのものが呪術界ではかなりタブーなことらしい。






「きっしょっ、ありえないッ！衛生観念キモすぎィ！ムリムリムリムリムリッ！！」


「ッんだとぉ！？」


「……これは同感」






かなり独特な動きをしながら距離をとった野薔薇ちゃんは、どこか軽蔑するような眼差しで悠仁のことを見つめている。

やっぱり昨晩のあいつの所業は普通なら考えられないことらしく、これには伏黒くんも素直に首を縦に振っていた。


……確かに、私だって例え状況が状況であろうとあのごつい指を飲み込もうとは思えない。

我が弟ながら、変なところで肝が据わっているのがまた危なっかしいところだと思う。






「それじゃあ、Aさんもそれに巻き込まれて？」


『……うん。だいたいそんな感じ』






まあ、あくまで物凄く簡単に説明すればの話なんだけど。


私の中に宿儺の呪力が宿ってしまったという端的な話以外をはしょったところで、なんら問題は無いはずだ。

逆に一から全てを説明したほうが問題ある気がするし、たぶん野薔薇ちゃんには引かれる。

それがわかっているので、私は絶対言わないと心に固く誓った。


後輩……しかもこんな可愛らしい子に変人扱いされたらたまったもんじゃない。


こう見えて私のハートはガラスでできているから、取り扱いには充分気をつけてもらわなければ困る。


“割れ物注意”。そんな印刷表示を名札にしたいくらいには、脆くて小さな壊れ物なのだ。







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