指先と生け贄【両面宿儺】

同族嫌悪 ページ37

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「全く、どうなることかと思ったよ……」






隣を歩く五条先生の声に、私は苦笑いを浮かべる。


あの後、私は夜蛾学長から「合格」のお達しを戴いた。

その覚悟と信念を貫き通せと言われて、その後はあっさり解散。



……とは言え、先程苛立ちに気を取られ口を割ってしまったせいで、宿儺の声が聞こえているという事実は呆気なく先生達にバレた。






『すみませんでした……おいおい話そうとは思ってたんですけど』


「あのねえ、一応君も監視対象なんだから。これからの動きによっては、死刑にされる可能性だってあるんだし」


『……以後気をつけます』






五条先生に割と真面目に怒られて、この人も他人を怒れるということを知った。

もちろん反省はしているし、心配をかけてしまったことに対しては悪いと思っている。


でも普段の感じからしてこういうことには緩そうなタイプだと思っていた分、ちょっと意外だったのだ。






「まだまだ若いんだからさあ。今朝も言ったけど、まず君は他人を頼ることから学びなさい」


『……先生は、私に頼られても迷惑じゃありませんか？』


「そりゃあもちろん。なんなら、嬉しすぎて泣くね」





間髪入れず真顔で言った彼のことを、私は正直若干引いた。

頼られたくらいで泣くって……この人、そんなに人徳ないのか。


でも先生には悪いが、そうなる原因はなんとなく察しがついた気がする。だって見るからに性格悪そうだし。






「Aー、今物凄い失礼なこと思ったでしょ？」


『いいえ全く』


「……顔に出てるんだけど」






五条先生の不服そうな顔が見え、私は自然と笑い声をもらす。


反応が面白いというか、どうやら先生は意外とからかい甲斐があるらしい。

素直な悠仁を適当にからかうのも面白いけれど、こっちはまた別の意味で見ていて飽きない。


でもこの人、本当ならたぶんからかわれるよりからかう方が性に合っているのではないだろうか。






『先生って、実はかなり猫被ってますよね』


「……なんでそう思ったの？」


『まあ、女の勘ってやつです』






先生は私の煮え切らない言葉を聞くと、愉快げに口元を緩めてみせた。








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