墓前 ページ24
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「じゃあ、行ってくるよじいちゃん」
苔のついたお墓の前で手を合わせ、この街を発つための挨拶をする。
燃ゆる4本の線香からは、ユラユラと細い煙が立ち昇っていた。
私達はこれから仙台を出て、南にある大都会「東京」へと上京する。
その行き先は、伏黒くんの通う“東京都立呪術高等専門学校”だ。
「新しい学校、楽しみだな」
『……そう?私はちょっと不安』
「あーでたでた、姉ちゃんの悪い癖!もっと出会いってもんを大切にしろよ」
『無理無理!絶対に嫌ッ。そもそも、誰でも彼でも仲良くしちゃうような節操無しのあんたにだけは言われたくない』
私の言葉の圧に、悠仁は「ええ……」と若干引き気味で声をもらす。
別に、知り合いが増えることが嫌なわけではないんだ。
ただ少し、人を信じすぎることが危なっかしいと思うだけ。
……とは言え、五条先生が言うに一年生は悠仁を入れて三人と言っていた。
私が編入することになるだろう二年生のクラスもそのくらいだと言っていたから、今までと違いそこまで気を張る必要も無さそうだ。
「良いか姉ちゃん、良縁は日頃の行いが大事なんだ」
『何インチキ占い師みたいなこと言ってんのよ。私、今一切そういうつもりないんだけど』
「ええッ、この間ドラマ見ながら彼氏欲しいって言ってたじゃん!」
『うっさいなッ!ちょっと黙れオマエ!』
ガヤガヤとした私達の声が、そよ風に揺られ消えて行く。
なんだかんだ言って、こうして悠仁と他愛も無い話をする時間はいつも通りの平穏だ。
これから私達の世界がどんな風に変わっていくのかはまだ分からないけれど、二人なら乗り越えられると信じたい。
「お……来たね、お二人さん」
「あ、五条先生!どったの?」
「いやあ、ちゃんとお別れできたかお迎えがてら見に来たのよ」
はしゃぐ悠仁を目の前に、例の紙袋を手にした五条先生はにんまり笑ってそう言った。
また買ったのか、喜久福……この人は甘いものが好きなのだろうか。
……なんて、笑いながら考えていた時のことだった。
_________“小娘”
『ッ……!』
ざわめく木の葉の音を縫うように、何者かが私を呼ぶ。
「ん……どした?A」
『あ、いえ……なんでもありません』
不思議そうな顔でこちらを覗き込んだ先生に向けて、私は咄嗟に小さな嘘をついた。
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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月22日 17時