恵みのお茶 ページ16
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『は……死刑ッ!?』
《しーっ……!声デカいよ〜》
あれから、五条先生は悠仁の体を担ぎあげ「迎え呼んであるから二人は病院に行ってらっしゃい」とだけ言い残すと、どこかに行ってしまった。
その場に残された私と黒髪の青年……もとい伏黒恵くんは、数秒呆気にとられながらも、なんとか校門前に停まっていた黒色の乗用車に乗り込んだ。
伊地知さんという穏やかそうな人が運転する車で病院に向かい、今は診察を受け終わった後の待ち時間。
不意に伏黒くんのスマホが鳴り響いたかと思えば、画面の向こうで《弟くん死刑になっちゃった》という言葉が聞こえてきたものだから私もパニックである。
『ちょっとそれ、どういうことですか……!あなたのこと信頼して悠仁を預けたのにッ』
《はいはい、ちょっと落ち着いて。大丈夫、死刑と言っても執行猶予付きだ。今すぐにっていう話じゃない》
『執行猶予?』
《詳しくは君と悠仁が合流してから話すから、とりあえず後で火葬場来てくれる?追ってまた連絡するよ》
『あッ、ちょっと……!!』
ブツッという歯切れの良い音ともに、通話が終了する。
とは言え、私からしてみれば歯切れも後味も最悪だ。
そんな私の狼狽えぶりを見て終始目をぱちくりさせていた伏黒くんはというと、私の手から静かに自分のスマホを抜き取った。
「……大丈夫、すか」
『ああ、うん……いや、大丈夫じゃないかも』
「……なんか飲みます?」
待合室にある自販機の前で、伏黒くんはそう言った。
きっと彼は今、あまり好きではない他人との意思疎通をはかろうと努力してくれている。
私はその優しさにじんと心を痛められ、無意識のうちに首を縦に振っていた。
『ごめんね、伏黒くん……悠仁のことで、色々迷惑かけちゃって』
「いや……それに関しては、俺の方こそすんません」
ソファに腰掛け、伏黒くんに貰ったペットボトルのお茶を一口飲み込む。
茶葉の香りと仄かな苦味が口の中いっぱいに広がって、少しだけざわついた心を沈めてくれた気がする。
私の落ち着いた表情を見て彼も安心したのか、心なしか先程よりも顔つきが穏やかになったように感じた。
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いか焼き - 好きです!!! 最高すぎます、、、応援してます!今から2を読んできます!楽しみすぎる…! (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 宿儺の声が頭の中で聞こえたらワイある意味死んでう( ´ཫ`)って思いながら見ました←めっちゃ面白いです!!応援してます( ˃ ˂ ) (2022年1月25日 0時) (レス) @page31 id: dce21dc0b1 (このIDを非表示/違反報告)
古椎エゴ(プロフ) - Tomorrowさん» ご指摘ありがとうございます。変換ミスしていたみたいです!知らせていただき助かりました! (2022年1月24日 17時) (レス) id: c3c7b307dc (このIDを非表示/違反報告)
Tomorrow(プロフ) - コメント失礼します。とても面白くて何度も読み返してます!ところでなんですけど、祥子ではなく硝子だった気がします!間違えてたら申し訳ないです! (2022年1月24日 17時) (レス) @page30 id: 81fe567fc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミーコ(プロフ) - 面白いです!宿儺推しなのでこの話はとても好きです!がんばって書いてくださいね!応援しています! (2022年1月23日 23時) (レス) id: b974f3c01e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月22日 17時