十三回目 昔の話 ページ13
伯父の正澄は、天下人の兄ということで佐和山十九万余石を任されている。
少ない石高だと思われるかもしれないが、本人はこのことを辞退していたのだ。それを、周囲が半強制的にこういう形に収めた。
もう城に着く、というところでふとある話を思い出した。刑部に聞いたが、たしか小田原攻めの三日前だったか…。
* * * * * * * * * * * * * *
刑部と三成は戦準備のため、兵の鍛練の様子を見ながら何やら話していた。それを見つけたAが駆け寄ってきたのだ。
貴「ねえねえ、凶王さん。聞きたいことがあるんだけど。」
三「その問いに答える義理はない。去れ。」
貴「皆殺しと半殺し、どっちが好き？」
三「人の話を聞け！そして、唐突すぎて訳がわからん！」
近くで鍛練をしていた兵が唖然としてAを見ている。だが、そんなことも彼女にはどうでもいいらしい。
貴「私はね、どっちも捨て難い。」
三「おい、勝手に話を進めるな。」
貴「ちょっと違うけど、手打ちもいいよね。」
三「…おい、」
貴「私の技術的に皆殺しは難しいかな…ま、人に頼むかも。なるべく頑張るかもしれない。」
三「貴様の顔の横に付いているものは飾りか？」
貴「手打ちはおいといて、生殺しと皆殺しどっちがいい？大してないなら半殺しを頼むよ？」
三「……それは、あれか？お萩か餅かという…。」
それを聞くと、近くにいた者たちが安堵のため息をはいた。紛らわしいことこの上ない。
貴「え？マジの方だけど？」
三「そっちは絶対無理だ、貴様程度には。」
貴「凶王さん、私のモットーは有言実行だからね？」
二人が散らす火花の音がどこまでも聞こえる。
三「塵芥と化せ！」
貴「消し飛べ！」
結局その日はこの二人の抗争で終わった。
* * * * * * * * * * * * * *
小田原が終わってから二人が初めて会った時、Aは餅とお萩の両方を持ってきたそうだ。京都の親父さんが作ったらしい。
一度足を止めて、思い切りため息をついた。思い出したからといって役に立たないではないか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななみ(プロフ) - 疾風少女、めっちゃ感動しました〜！何回見ても泣けましたよ(^^♪ 笑えるところもいっぱいでした。頑張ってください(*´∀｀*) (2014年8月29日 10時) (
レス) id: abde43f194 (このIDを非表示/違反報告)
月詠命 - 最近忙しくて、なかなか見れずにいましたが、久々に見れました！やっぱりこの作品とても面白いです！更新頑張ってください！ (2014年8月16日 13時) (レス) id: 257169186b (このIDを非表示/違反報告)
桜楼(プロフ) - 白鈴さん» すみません、なかなか忙しくて…。応援ありがとうございます！ (2014年5月31日 21時) (レス) id: b7bc56638c (このIDを非表示/違反報告)
白鈴 - (たぶん)はじめまして、白鈴と言います。本編のほうも番外編のほうも、この小説、大好きです！更新、頑張ってください♪応援してます！ (2014年5月8日 19時) (レス) id: c5c1a67bf2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠命 - こちらこそよろしくお願いします。続きを詠めるのを楽しみに待ってます。 (2014年3月3日 21時) (レス) id: 49e70c2b0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
