[BL]普通に生活していたらSな先輩に弱みを握られてしまった。

第二十六話 ページ29

「おっはよーA。なんか元気無い？」


『零夜か…うん…まあ、ちょっとな。』


流石に零夜に先輩のことは明かせず、受け流す形になる。


「いや絶対何かあったでしょ。例の北島先輩とでも何かあった？」


感の鋭い零夜だ、的確に突いてきた。


『なぁ、零夜。ちょっと触れられたりするだけで変な感じなんだけど、何だと思う？』


「恋でしかないでしょそれ。」


間も置かずそう言われてしまった。


先輩に向くわけ無いと思っていた恋愛感情が、もしかしたら沸いてるのかもしれない。


HRも始まる頃になり、零夜と別れる。


これが、恋愛感情というものなのか…？


氷上さんに向いていた感情と、似ているような、ないような。


そんな自問自答を繰り返すしている間に、もう帰る時間になっていた。


少し落ち着けば、と思い、放課後の図書室に向かってみる。


図書室には誰もおらず、俺1人だけだった。


適当に本を選び、座り、机に伏せる。


『俺らしくねぇな…』


「何が君らしくないの？」


ポツリと呟いた言葉に思わぬ返答が来て、かなり焦った。


もう想像の通り、北島先輩だ。


「ここで何してたか知らないけど、そろそろ帰るよ？時間も時間だしね。」


気付けばもう最終下校時刻間際で、俺は先輩に連れられるまま外に出た。


多分、もうこの人に、直接聞くしかないな。


『…先輩、なんか、相手に触れられたりするだけで変な感じになるんですけど、なんですかね。』


出来るだけ、簡潔にしてみたつもりだった。


先輩は、1つ間を置き、「そっか。」と短く返した。


「それはきっと、恋、だよ。また氷上さんか知らないけど、好きならその人を大切にしなよ。」


先輩はそう言い、歩くペースを速めた。


『ちょっ、まって、』


「今日の君を見て何となく思ったよ。俺と関わるより、その人といな。今日で君は俺から解放されたよ。じゃあね。」


先輩はどんどん歩くペースを速め、追い付けなくなってしまった。


俺が好きなのは、紛れもない先輩なのに、もう見えなくなってしまった。


多分、電話などしても話を聞いてくれないだろう。


……先輩に会いたい。


それを叶えるべく、俺は先輩の行動を思い出しながら、帰路に付いた。

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