名案 ページ44
もう、すっかり慣れた間取りは、明かりをつけなくてもどこにもぶつからない。
リビングのドアを開けて、照明のスイッチを入れれば、見慣れたリビングが照らされた。
「散々ペット扱いしといてさっ!」
大きなひとり言。
「癒されるとか言っといてさっ!」
相手のいない文句。
一人のリビングで地団駄を踏んで、子供みたいに喚く。
「腹減った!」
もちろん、返事は返ってこないから、自分で冷蔵庫を開けてみる。
入ってたのは、缶ビールと牛乳。
いつ買ったのか忘れたチョリソー。
ビールを指先で引っ掛けるように取り出して、ゆっくり冷蔵庫のドアを閉じた。
静まり返る部屋に、冷蔵庫から微かな振動音だけが聞こえる。
冷えた缶ビールを額に当てて、冷蔵庫に背中を預けるようにもたれた。
「……ちがうな。」
腹が減ったわけじゃない。
ただ、Aちゃんのご飯が食べたいだけだ。
気に入って揃えたモノクロの家具も、無駄のないシンプルな部屋も、居心地の良かったはずの一人の生活も、今は、まるで鳥かごみたいに見えた。
ここには、温度が足りない。
壁越しに、温度と明かりと甘い香りを探して、見つからないキミの存在を思い描く。
キミの部屋に、オレの居場所は、ある?
都合よく、自分勝手に、キミのテリトリーに入り込んで、オレを知らないキミとの関係は、どんな結末を迎えるのか、少しだけ不安に思う。
「傘……、どうしよ。」
缶ビールのプルタブを引こうと爪を引っ掛けて、突然ひらめく。
「これじゃね?!」
もう一度、冷蔵庫を開けて確認する。
「よしよし!これだ!オレ、天才!」
冷蔵庫から取り出した期間限定の缶ビールをコンビニのビニール袋に突っ込む。
繋がるように、返せばいい。
オレの心のメモに書き留めておいた言葉に、感謝して、適当な紙切れに、出来るだけ丁寧に手紙を書いた。
―・―・―・―・―
Aちゃんへ
傘ありがとう。
ちゃんと返します。
カギも見つかったよ。
ビールは、焼おにぎりのお礼です。
今度、一緒に飲もうねっ!
ニカより
―・―・―・―・―
カギは、とっくに見つかってたけど、そこは、真実を明かす必要は無いと判断。
メモをビニール袋に忍ばせる。
これで、繋がった。
.
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時