ピンポーン ページ43
とは、言ったものの……
結局、オレは、どうしたらいいのかわからないまま、予定より早く仕事が終わって、その後の予定もなく、普通に、自分の部屋の前に立っていた。
まだ、人通りも、車通りも、そこそこある夕方だっていうのに、帰りがけに寄った近所のコンビニの店員も、すれ違う女子高生も、エレベーターで乗り合わせた住人も、誰1人、オレが『二階堂高嗣』だってことに気づかなかった。
いや、もう、ここまでくると、『気づいてくれなかった。』って、言いたくなるレベル。
「……凹むわぁ。」
ゴンっ、と。音を立ててドアに額を着けて、そのままの姿勢で視線を向ける先は、隣の部屋のドア。
あの夜みたいに、開かねぇかなぁ……。
薄暗くなった空に雨の気配はなく、ドアが開く気配もない。
ポケットからスマホを取り出して時間を確認すると、まだ、19時を過ぎたばかりだった。
「腹減った……。」
グッと体を剥がすようにして、ドアから離れる。
向かう先は、もちろん、Aちゃんの部屋。
ほんの数歩で到着するモラトリアムへの入口。
「まだ、帰ってないかな。」
聞いたわけじゃないけど、きっと、仕事してるだろうし、この時間に、帰ってるのかもわからない。
でも、もう、どうでもいいや。
ー ピンポーン
どうにかなるさ。
成り行き任せに押したインターフォンの音が響く。
響く……けど、反応なし。
もしかしたら、トイレとかね。
あ、洗濯物取り込んでたりね。
電話してたかもしれないしね。
ー ピンポーン
思いつく可能性を並べて、念のため、もう一度押したインターフォンの音は、何だか少し虚しく響いた。
「なんだよ!腹減ったよ!ちゃんと面倒見ろよ、飼い主!」
返事のないドアに文句をぶつけて、渋々、自分の部屋の前に戻って、鍵を差し込む。
開いたドアの向こうから、今日もAちゃんの傘が、オレを出迎えてくれた。
「……ただいま。」
そっと、指先で傘の柄に触れて、言った。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時