キミの名は ページ37
「今さらとか言わないのっ。」
「だって、今さら過ぎて…。」
「いいからっ、早くっ!ミツに怒られるっ。」
わかりやすく渋ってくるキミに、その先を急かすと、恥ずかしそうに、それこそ、今さらな他人行儀に、名乗ったのは、
「あ……森田と申します。」
まさかの仕事モード全開な苗字のみ。
「違うでしょ!」
思い切り全力で否定すると、少しふてくされたように、トーンを落とす。
「いや、違わないし…。」
違わないのは、わかってる。
でも、今のこの関係を、壊したくないんだ。
「オレだって、今さら過ぎて『森田さん』なんて、呼びにくいわっ!」
ああ言えばこう言う。
こんなやり取りすら、楽しくなってきて、迫るタイムリミットに、耐えきれずに自ら言った。
「だから、名前を教えてっ。」
ほら、きっと、『ニカ』なら許されるやつでしょ?
適度に自分にブレーキをかけて、心の中で言い聞かせる。
これは、恋とは違うから。
オレの我儘なリクエストに、キミが小さく呟いた。
「……… A。」
指先で頬に掛かった髪を耳にかけて、恥ずかしそうにするキミの頬が染まる。
……A。
心の中で呼んでみるキミの名前。
オレ達の距離が近づきすぎないように、キミがこの関係を断ち切らないように、おれは、キミの『仔犬』の顔をする。
「オッケー!
一応、年上だから、『Aさん』?」
「うわっ、なんか、さん付けとか気持ち悪いわ…。」
一応気を使ってみたのに、嫌そうな顔で華奢な手で口元を覆う。
「じゃあ、『Aちゃん』?」
「『ちゃん』って年でもないけどね…。」
オレの提案は、ことごとく却下されていく。
残るは……
まさか……、参ったなぁ。
「………この辺で勘弁してください。」
「えっ?」
「『A様』は、さすがに……。」
「はぁっ!?」
最終的に行き着いたオレの予想は、大きくはずれていたらしく、おかしな声を上げるキミが目を見開いて、それから、笑った。
どうやら噛み合っていなかったらしい会話は、キミを笑顔にして、その笑顔に胸の奥が苦しくなった。
「えっ?違うのっ?」
心の奥は、見ないふりして、目の前のキミを見つめれば、楽しそうに笑うキミが意地悪に口を結ぶ。
いいよ。
キミのペースに乗ってあげる。
「『ご主人様』でしょ?」
「ペットじゃねーしっ!」
ほら、これで、オレ達の関係は、出来上がり。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時