引き止める理由 ページ35
立ち上がって、オレのジャケットを取りに行くキミの後ろ姿。
揺れるパーティードレスの裾と、カーディガンを羽織った後ろ姿が少し寂しげで
「癒された?」
思わず口にした言葉に、ジャケットを持って振り返るキミを見つめた。
その手を引き寄せたり、抱きしめたりはできないけど、それでも、オレの髪を撫でて『癒される』って、キミが言うなら、それでいいって思ったんだ。
「……… うん。」
その返事が聞けたら、満足。
キミの癒しになれたなら、それ以上は、望まない。
オレは、キミの『仔犬』になったんだから。
キミの手からジャケットを受け取って、袖を通す。
これ以上、キミに踏み込みすぎないように、『ニカ』のスイッチに切り替えて、茶化すように言った。
「そんなに癒しが必要でしたか?お疲れですね〜。」
リセットされる空気。
「色々疲れてんのよ。こう見えて。」
「本物の犬とか飼えばいいじゃん。」
「本物は、トイレのしつけとか大変だからやめとく。」
「あぁ〜、オレなら、トイレは自分で行けるしね。」
「そうそう、しつけてくれたお母さんに感謝だね。」
「だからっ!犬じゃねーしっ!」
玄関までの短い距離をずっと前からの友達みたいにふざけ合う。
テンポよく返ってくる会話。笑い声。
居心地のいい距離。
靴を履きながら、背中に感じるキミの視線には、気づかないふりをして立ち上がって振り向く。
「それじゃっ!」
ほら、そんな顔しないで?
「うん。じゃあね。」
仔犬のままで、出ていくから。
キミは、飼い主の顔で見送って?
「ごちそうさまでした。」
頭を下げて、ドアノブに手をかける。
このドアを開ければ、もう、キミのペットは、おしまい。
グッと力を入れて、ドアを開けようとした瞬間。
「あっ……あのっ。」
慌てたようなキミの声に、引き止められた。
「なに〜?」
振り向けば、明らかに動揺しながら、胸の前で指先をいじる姿に、可笑しくて、笑いだしそうなのをこらえる。
「えっと、あの……鍵っ!
鍵、見つかるといいね。」
長いまつ毛をパタパタさせて、落ち着きなく瞬きしながら言葉を探して、出てきたのは、この関係のきっかけ。
「そうだった…。」
ポケットを撫でて、その存在を確認する。
嘘をついた訳じゃないけど、ちょっとだけキミを騙したみたいで、罪悪感を感じた。
ミツには……、まぁ、バレなきゃいいか。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時