重なる手 ページ33
「ちょっ…、今度は、何!?」
反射的に、そう言ったけど、その手を振り払ったり、「やめろよ!」なんて、言う気は、驚くほど湧いてこない。
ただ、焼きおにぎりを持ったまま、キミのことを見つめ返して、次の言葉を待った。
好きになったりしないでね。
ファンだったとか言わないでね。
それだけを祈った。
「何って、……仔犬撫でてるの。」
「はぁ?」
予想外のキミの言葉。
仔犬……って。
「犬じゃねーしっ!」
反論して、わかりやすく不満気な顔をしてみても、髪を撫でるキミの手は、離れてなんていかない。
髪に触れる細い指先は、少しだけ毛先を絡ませ、時々、耳に触れて、気づかないように、見ないようにしている気持ちを、また、呼び起こす。
柔らかな表情を浮かべて、オレを撫でながら、『仔犬』って宣言したキミは、まるで『飼い主』みたいに言うんだ。
「いいじゃない。減るもんじゃないし。
癒されてるの。」
その表情に、その声に、その視線に、『ニカ』でいられなくなりそうで、視線を逸らして、言い返す言葉を探す。
「なんだ、それ…。」
呟いた言葉は、何一つ反論できず、否定できず、それは、この状況を受け入れた様なもの。
『仔犬』と『飼い主』
『ニカ』と『お隣さん』
オレとキミとの『恋愛とは違う関係』
覚悟を決めて、キミの瞳を見つめれば、髪を撫でる手を止めて、その手の感触が離れていく。
その手を優しく捕まえると、想像以上に、華奢な手。
触れた指先が冷たくて、少しだけ強く握り直した。
この手を握って歩くのは、オレじゃなくていい。
オレじゃない方が……いいんだ。
ただ、この居心地のいい関係に、もう少しだけ甘えていたいから。
もう一度だけ、聞かせて?
「ねぇ、本当に、オレのこと知らない?」
少しの間があって、困った様な声で
「お隣さん……でしょ?」
そう言ったキミの目を、真っ直ぐに覗き込む。
嘘じゃ……ないよね?
掴んだままのキミの手をゆっくりとテーブルに降ろして、その手を包むように自分の手を重ねた。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時