指先 ページ32
焼おにぎりを乗せたお皿と、四葉のクローバー柄のマグカップを持って。キッチンから出てくるキミを目で追いながら、一度、キチンと座り直す。
「召し上がれ。」
目の前に出された焼おにぎりは、シンプルだけどセンスあるお皿に乗せられて、温かな湯気と、美味しそうな匂いを放つ。
「うまそうっ!いっただきまーす!」
おにぎりと、そして、料理を作ってくれたキミに、感謝して手を合わせてから、熱々の焼おにぎりを慎重に頬張る。
空腹の時は、大体のものはごちそうに感じるものだけど、キミが作った焼きおにぎりは、きっと、満腹でも美味しいって思えるレベル。
「おいしい?」
目の前の席に座ったキミが聞いてくるから、指先に付いた米粒を舐めてから、全力で答える。
「うんまいっ!」
感想を聞かれたから、答えただけなのに。
美味しかったから、美味しいって答えたのに。
キミは、急に、視線を落ち着きなく逸らして、瞬きしながら俯いた。
もしかして、照れてる?
ほらね。
『ニカ』にだって、キュンときちゃう女の子はいるんだって!
全然、どこがキュンとするポイントだったのかわからないけどね!
なんて、思いながら、焼きおにぎりに噛み付いていると、キミと視線が合う。
「んっ?」
頬張った焼きおにぎりをモグモグしながら、困惑した表情のキミに首を傾げれば、今度は、何かを閃いたみたいに、パッと表情が明るくなったキミが言った。
いや、言った……って、言うよりも、気合を入れた感じで、
「よしっ。」
って、頷いた。
何か覚悟でも決めたのか、何かが始まっちゃうのか、それとも、まさか……
本当は、オレのこと、知ってた……とか?
「えっ、えっ、何?何が『よしっ』なの?」
ちょっとだけ、動揺して。
ちょっとだけ、期待して。
ちょっとだけ、ガッカリして。
こんな、おかしな出会いで手に入れた、不思議で居心地のいい関係が、一夜限りの夢だったかのかと、自然と頭の中で、この後の展開の対応策を考える。
最悪のパターンは、引っ越し。
そこまで考えたところで、キミの声が、優しくオレを撫でた。
「何でもないよ。お食べ。」
いや、声だけじゃない。
キミの白くて、細い指先が、オレの髪に触れていた。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時