キミの部屋 ページ25
『ニカ』のイメージは、オレが作ったものじゃないから、多少の無理は仕方ない。
無理しないで生きていける場所なんて、どこにもないし、オレが生きてる世界は、イメージ先行で窮屈だ。
でも、『ニカ』でいることは、嫌いじゃない。
「え?」
自分から誘っておいて、今度は、不思議そうに聞き返すから、今度は、キミの部屋のドアを指さして言った。
「部屋で待たせて?いい?」
オレの指先を辿って、自分の部屋のドアを確認したキミが、我に返ったようにハッとして、ドアノブを掴んだ。
「あ!うん。どうぞ……、あ!やっぱり、ちょっと待って!」
開きかけたドアから薄いオレンジ色の明かりが漏れて、オレの足元に届いたかと思うと、慌てたキミだけがドアの向こうに消えた。
「え?!お……おいおいおい。」
閉じたドアに、思わずひとり言で話しかけると、少しの間のあと、もう一度、ゆっくりドアが開いた。
コートを脱いで、深い緑色のワンピースからは、細い腕が伸びて、ドアを支えながら、オレの様子を伺うように、顔を覗く。
「……ごめんなさい。ど、どうぞ。」
恥ずかしそうに謝って、今度こそオレを迎え入れてくれるその足元は、やっぱりクソダサいサンダルで、密かに笑いを噛み殺した。
「おじゃましまーーーす!」
きっと、ニカなら、こんな風に、図々しく上がり込むでしょ?
靴を揃えて脱ぐくらいはしても、きっと、くるりと向きは変えたりしないよね?
靴を脱いで、振り返らずにリビングを目指すオレの後ろで、ドアが閉まる音と、キミが靴を揃える気配がした。
片付いたキッチン
2人がけのダイニングテーブル
毛足の長いラグにローテーブル
キチンと閉められた磨りガラスのパーテーションの向こうは、きっと寝室
甘い匂いは、キミとすれ違った瞬間に感じたのと同じ。
全体的に明るい色合いの部屋は、まるで、居心地のいい陽向みたい。
無意識で比較するのは、カノジョの部屋。
シンプルで、オレ好みのモノトーンなのに、落ち着かなくて、結局、いつもオレの部屋で会ってた……。
「上着、預かるね。」
突っ立ったまま、過去に引き戻されそうになったオレをキミの声が呼び戻す。
「あ、うん。」
ジャケットを脱ぐと、纏っていた夜の空気が冷たく放たれ、柔らかな温度がオレを包んだ。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時