すべてはキミに恋するため

羨ましくなくもない ページ24

「お前、勝手だなぁ。オレの予定とか全然気にしてないだろ？」

「うん。」

「うん。じゃ、ねぇよ！もーーー。」


文句言いながらも、全然怒ってるトーンじゃない。


それに、ミツの声に重なって、優しい甘い笑い声が聞こえたから、少しくらいのワガママ言っても、

『ニカちゃんなら、仕方ないね。』

って、なだめてくれるよね。


「ちょっと、あー……送ってから、行くから。まだ、全然、……ほら、前に連れて行ってやった炭火焼の店の近く。」


遠回し。
直接、『彼女』って言わないのは、オレに気を使ってる証拠。


「うん、えっ、まだそこ？」


だから、わかってるけど、敢えて気を使わないで、無神経に返す。


オレとミツの言葉にしない関係。


「おい、文句言うなら、迎え行かねぇぞ。」

「ごめんごめん！」

「できるだけ急ぐけど、まだ、かかると思うわ。」


一つも聞き取れない英語の歌詞に『風邪ひかないようにね』って、オレに向けた声が聞こえる。


ぼんやりと思い出すシルエット。

ミツには、勿体ない優しい彼女。


「よろしく。着いたら電話して。じゃ。」


少しだけ羨ましくて、ミツの返事は聞かずに、電話を切った。

ギュッと握ったスマホが、少しだけ熱くて、そのまま、ポケットに突っ込んだ。




羨ましくなんてない。

とは、言えない。




ミツをミツとして、想ってくれる彼女の存在。

ミツをアイドルとして、応援してくれる彼女の姿勢。




もう、オレには、ない。

…………いらない。




勢いをつけて振り向くと、キミは、驚いた様に数回瞬きをして、オレの言葉を待つように、視線をあわせてフリーズした。




キミの頬が色付いて、少しだけオレの自信になる。




ほらね、オレだって、ドキドキさせられるんだよ。




恋愛とは違う関係、作っちゃう？




『ニカ』のスイッチをオンにして、めいっぱいの笑顔で言った。




「部屋で待たせて！」



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