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シトラスの彼女 ページ2

ガラスのローテーブルとソファの間に、蹲るように、小さな体がさらに小さく見える。

やっと、オレの方を見上げるその目と視線が合った。


「電気つけなよ。」


もう1度言うと、また、テレビ画面のオレに視線を戻して、小さな声で言った。


「いいの。この方があの日みたいだから。」


あの日。


ステージの上で、転がり回るように喜びを噛み締めた、あの日。


客席の中にいたカノジョに、オレは、どう映ったのかな?


そっと、カノジョの後ろのソファに座って、その細い肩を抱きしめた。


「ねぇ……あの時、
「高嗣。立派になったね……。」


あの日、あの場所で、何を思っていたのかを聞きたかったのに、口に出そうとした言葉は、カノジョの声に消えた。


「立派って。フフフ」

「だって、そうじゃん。」


少し不貞腐れて、少し照れた声が、擦り寄せた頬を伝って届く。


「……まだまだ、だよ。」


出会った頃と変わらないシトラスの香りがして、その髪を優しく撫でた。


「まだまだ?」

「そ、まだまだ。
オレ達、まだまだ、もっと上まで行かなきゃいけないから。」


1人じゃ目指せない、どこにあるかも分からない天辺を目指して。


「……そっか。」


そう言って俯くカノジョの耳に、髪の上からキスすると、小さなピアスが唇に触れた。


「どうしたの?なんかあった?」


いつもより大人しいカノジョに、少しだけ様子がおかしい気がして聴いてみる。

正直、女の子の気まぐれみたいなのには、気づいても気付かないふりする方が楽だけど、今日は、ちょっと違う気がしたから。


「何もない。」

「そう?ならいいけど。」

「うん。……何もないよ。」


やっぱり、気まぐれ?


「んじゃ、オレ、お風呂入ってこよー。」


そう言って、立ち上がりながら、カノジョのフワフワの髪をグチャグチャに撫で回す。


「キャーー!やめてっ!もー。」


目一杯膨らんだ色白の頬を両手で潰して、そのまま小さな赤い唇にキスをした。


「高嗣の……バカ。」


ボサボサの髪を両手で抑えながら、その隙間からオレを睨んだ目は、少しだけ潤んでて、なんだか胸の奥がギュッとした。

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設定タグ:Kis-My-Ft2 , 舞祭組 , 二階堂高嗣   
作品ジャンル:恋愛
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時

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