真夏の夜 ページ1
深夜でも湿度の高い生温い風が、腕や頬にまとわりつく、真夏の空気。
タバコとアルコールの匂いを薄く纏って、夜道を歩くのは、嫌いじゃない。
誰もオレに気づいたりしない。
オレの事を知る人は、いない。
そんな時間が真夜中だって、知ってるから。
鼻歌を歌えば、連動するように、体に染み込んだリズムが爪先からステップになる。
忘れない様に、繰り返し繰り返し、少しだけ期間の空いた次の公演に、もっといいステージを見せられるようにと、体と頭が無意識で上を目指す。
ポケットから鍵を取り出して、エントランスを抜ける。
「あーー……ミツのせいで汚れたし。」
エレベーターが上昇するのを感じながら、何気なく視線を落とした先に、ベタっと焼き鳥のタレがついたパンツ。
話しに夢中になって、手に持った焼き鳥のことすら忘れるって、どういう事だよ……
指先で擦ると、まだ、少しベタついて、余計なことをしたことに気がつく。
「あーぁ……」
静かに開いたエレベーターの扉の向こうは、見馴れた通路が続いて、突き当たりのドアに、鍵を差し込む。
ガチャリ
ドアノブを引くと、足元にヒンヤリとした空気が流れた。
「……あ。」
後ろ手に鍵を締めながら視線を落とすと、オレのスニーカーの隣に揃えられた華奢なデザインのサンダル。
ちっさい足だな。
対称的な2足に、小さく吹き出して、その隣にサンダルを脱いだ。
「ただいまー。来てたの?」
廊下の先、閉じられたリビングのドアに、強弱するぼんやりとした光がみえるのに、返事はない。
オレの部屋の鍵を持ってるのは、オレとカノジョだけ。
「ねーー、いるなら返事くらいしろって。」
ペタペタと裸足で廊下を進んで、リビングのドアを開けると、一人暮らしには贅沢な大きめのテレビ画面に、あの日のオレ達が騒がしく走り回っていた。
「電気くらいつけたら?」
「……いいの。」
やっと小さな返事が返ってきて、その声にホッとした。
キッチンカウンターの上に置かれた緑色のクマが付いた鍵の隣に、自分の鍵を並べる。
リビングに視線を向ければ、いつもの場所に膝を抱えて座る小さな影が言った。
「おかえり。」
.
850人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時