8.「そんなこんなの紆余曲折」 ページ10
松野A、18歳。
華の十代もそろそろ終わる頃。
私の同級生はみんなキャンパスライフだの学校生活だのをエンジョイしているそうだ。
面接試験で落とされた私にはそんなこと関係ないのだけれど。
「良い子」になれなかった私は「良い人」にもなれるはずなく、ただアルバイトをする以外はただの暇人となってしまった。
それでもお母さんたちには失望されたくないので、朝はちゃんと早く起きて、みんなの朝ごはんを作って、さっさと自分の分だけ食べて部屋に戻ってバイトがある日はバイトに行ってという毎日を過ごしている。
お母さんは「ゆっくり寝ていてもいいのよ、ご飯なら私が作るから」と言ってくれるが、流石にバイトするだけの人生はどうかと思うので、無理を言って家事を手伝っている。
兄たちはもはや仕事をしていないそうだ。
昼近くにならないと起きてこないし、昼間もずっと居間でごろごろしているようだし、夜こそ早くに寝るが、それでも朝はやはり遅い。
私とはほぼ正反対の生活を送っていると言っても過言ではないと思うが、お母さんはなにも言わずにいるらしい。
お母さんは昔から優しすぎるんだ、だから私にも兄にも叱ることはせずに見守ってくれるんだな。
父さんだって、たまに叱ることはあるけど「出て行け」などとは言わずに家に居させてくれるし、うちの親はやっぱり優しいんだな。
「じゃあお母さん、おそ松たちが起きてきたらご飯それぞれで温めて食べるように伝えておいてね、お願いします。」
今日は朝から夕方までシフトが入っている。
寒くないようにきちんと防寒して、使い古したブーツを履いて引き戸に手をかけた。
「分かってるわよ、頑張ってね。……疲れたらきちんと休んでね?体壊しちゃったら大変だわ!」
「大丈夫だよお母さん、私そんなにヤワじゃないから…!……多分。」
いってきます、とだけ言って敷居を跨ぐ。
バイト先はここから歩いて15分くらいのところにある。
しかし、今日もまた寒いなあ。
帰りにカイロを買って帰ろうなんて軽く考えながら、道を急いだ。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時