6.「要らない子の定義」 ページ7
俺たちは何を以ってしてAのことを「要らない子」だなんて言ってしまったのだろう。
それぞれが個性を求め始めたころから、ずっと考えてきたことだった。
最初の俺には考えるだけの脳みそなんてなかったから、「要らない子だからかな」だけで済ませてしまっていた。
今思うとかなりバカだ。
でも、Aが俺たちに啖呵を切った日からずっとそのことだけが気になっていて仕方がなかった。
からっぽの頭で、ひたすらに考えた。
学校にいる時も、部活で劇の練習をしている時も、家でだらだらしている時も、寝る前にも。
ずっとずっと考えて、そして最近になってやっとひとつの答えにたどり着いた。
「きっと俺たちは本当はAのことを、要らない子だなんて思っていなかったのかもしれない……。何故かって、Aは俺たちにとってたった一人のsisterだからさ…。」
話し込んでいたみんなに学者っぽく言えば、チョロ松に白い目を向けられつつも賛同の意見をもらえた。
「確かにそれはあるのかも。…でもさカラ松、そしたらなんで俺たちはあんなことしちゃったわけ?」
「お前は要らない子」。
俺たちは昔あいつにそう言い放った。
赤の他人に言おうものなら、学校に呼び出されて雷を落とされる台詞であろう。
昔の俺たちの考えていたことが理解しきれないからこそ、こうして俺たちは困っているのかもしれない。
「俺にもよくわからないが、俺たちはAにヤキモチを焼いていたんじゃあないか?……俺たちは男で、母さんたちから見たら全員Aの「兄」で、なにより6人もいる。Aは女の子で、母さんたちから見たらおれたちの「妹」なわけだろう?……、より母さんたちから可愛がられるのは、世話を焼いてもらえるのはどっちだと思う?」
「Aだよね。…僕たちは本当は我慢しなきゃいけなかったんだよね、でも出来なかった。」
トド松は目を伏せて俺の質疑に応答した。
しかも年だって2つ離れているし、俺たちは「兄」だ。
本来ならAという存在が可愛くて可愛くて仕方がないのだろう。現に今の俺たちにとって、Aは愛おしくて仕方がない。
「そういうことだ。……俺たちはがめつすぎたんだ。何も分からないガキだったんだよ。だからあんなことしたんだと思うんだ。」
「俺たち、何がしたかったんだろうね。……大切な妹をぞんざいに扱って、最低な兄だったね。」
__結局、要らない子の定義なんて無かったんだ。
2727人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時