5.「私は要る子」 ページ6
そうして、月日は川のように流れて、さらさらと。
好かれる努力なんて無駄だったんだと理解し、みんなに嫌われてもいいから、どうにかして良い子になろうと考えました。
中学二年のときには学級委員長を。
中学三年のときには生徒会長を。
高校は県内屈指の名門県立高校に。
もともと遊び呆けるだけの体力も、一緒に遊べる友達も兄弟もいなかったので、勉強だけが唯一の「遊び」のようなものでした。
だから高校進学になんて困らなかったし、良い子はみんなそれなりに頭のいい学校に行くのだろうなと思ったのだ。
兄たちはみんなとりあえず高校には行ったようだけど、どこの高校に行ったかまではよくわからない。
下手したら行ってないのかもしれない。
「…A、本当に大丈夫?1日くらい休んでもいいのよ?」
高校に入ってしばらく経った頃には、お母さんにこんなことを言われた。
きっと徹夜で勉強していたからだ。
顔色が素晴らしいほどに悪かったから。
「大丈夫だよ、ついつい夜なべしちゃってさ!行ってきます!」
中学生のころとは打って変わって、私は親と人前では明るくなった。
ただ、兄たちがいると、それだけで明るく振舞えなくなる。
何でかは知らないが、きっと怖くて仕方がないのだ。
「要らない子」と吐き捨てられ、笑われたあの頃が。
流石にいい大人なんだから、そんなことするはずないだろうとは理解している。
なのに、まだどこかで認められないところがあるようだ。
*
「……、ニート達。まだAに何かしてるの?」
Aが明るく家を出て行った後。
彼女のことを心配していた母さんが、ふとそんなことを言った。
「俺たちはもうなにもしてないよ!!ねぇ、おそ松兄さん?!」
僕は隣にいたおそ松兄さんに話を振った。
兄さんは戸惑ったような顔をした。
「俺たちはAとちゃんと仲良くしたいんだ。だけどどうすればいいのかわからないっつーか…」
Aは僕たちのことをどう思っているのだろうか。
怖いとか、関わりたくないとか考えてるんだろうな。
だって、普通そうじゃん。
「……はぁ。Aはもう随分変わっちゃったわ。テストで満点を取ってくることが当然だとか、人前では明るい子でいようとか。……もともと純粋でとても良い子だったのに、どこで捻くれちゃったのかしら。」
母さんのもの哀しそうな声が廊下に木霊した。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時