42.「本当は要らない存在」 ページ44
「……っ、喜んで。邪魔者が消えて、清正するでしょう。」
荷物を持って、障子を勢いよく閉める。
誰の顔も、見たくはなかった。
『………一松の、ばか。』
あの猫が、未だ私の心を読み取っていただなんて、知る由もなく。
「…あ、A!………どうしたんだ、何かあったのか?」
「………カラ松は、」
カラ松は、私のことが嫌い?
その言葉は発される前に、乾いた呼吸として外界へと放り出された。
「……、A、A?」
ひゅー、ひゅー。
そんな音が、気管支から、口から、私から聞こえてくる。
「…っは、大丈夫。………先、お会計済ませちゃおうか。」
水分不足か緊張かで、カタカタと手が震えた。
ただ、一松が怖くて仕方がなかった。
*
「……、そんなことが」
「………馬鹿だよね」
カラ松は複雑そうな顔をしていた。
何でかはよくわからないけれど。
「……、一松。……あいつは最初、誰よりもお前のことを気にかけていたんだよ。『Aだけ仲間外れみたいで嫌だ』『他の何よりも家族のことを大切にしたい』っていいながら、いつも紙切れと鉛筆や漫画をもってAのところへ行ってた。」
ぽつり、ぽつりと私の前に明かされていく一松の本当の姿。
もしかしたら、夢に出てきた紫の兄というのは。
「……それを見た十四松も感化されて、Aの世話を焼くようになったよなあ。……ああでも、一番喜んでいたのはトド松か。『僕がお兄ちゃんだよっ!』って言って、手遊びとかしてたな。」
「…ねぇ、カラ松。」
まるで私に読み聞かせをするかのように話を続けていたカラ松と、それをずっと聞いていた私。
それにそっと終止符を打つと、抗議の声ひとつ無しにカラ松が私の方を向いた。
そうして、私はぽつりと声を紡いだのだった。
「もし私がいなくなったら、一松はどう思うのかな」
冬の寒さを纏った冷風が、私とカラ松を貫いた。
少しずつ、また少しずつと、何かが迫ってくるかのような気配が、そこにはあった。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時