34.「顔面セーフにご用心」 ページ35
肋骨あたりが痛い。と苦情を寄せられたのは、私がカラ松を解放したときのことだった。
感極まってついつい抱きしめてしまったが、彼は怪我人である。
あれだけの物を投げられたのだから、骨や脳に異常をきたしているという可能性も高い。
明日、朝一で病院へ連れて行った方がカラ松の身のためであるし、私自身のためにもなるのだろう。
あの外道を極めた男たちに、私から用意してやる飯などないだろう。
明日だけはお母さんに頼んで、五人分の朝ごはんだけ別でつくってもらおう。
「……ちょっと端に寄って。寝たいから。」
「えっ…あ……、……!」
私の言葉に不安と畏怖の念のこもった眼差しを向けたカラ松だったが、私が押入れの戸を開けて布団を敷いていくのを見て、それは安堵と期待に変わった。
「怪我が痛んだら大変だから、カラ松は私のベッドで寝てね。……臭かったらパブリーズかけていいよ。」
「全然臭くないから大丈夫だ!あの、あれだ。Aから普段漂ってくる香りが100パーセントの濃度になった感じだから!」
「それ逆に匂いキツくない?!カラ松がいいなら全然いいんだけど!」
いい感じに盛り上がり楽しくなってきたが、もう深夜だ。
寝る寝ないはともかくとして、布団に入らないと明日確実に起きれない。
私が布団へ入っていくと、ベッドの近くであたふためいていたカラ松も身体のあらゆる部位を庇うようにしてもぞもぞとベッドへ入っていった。
「……カラ松。明日、出来れば鬼松たちが起きてくる前に病院行くよ。」
「鬼…??ああ、わかった。……なんか、久しぶりだよな。」
ふと、カラ松はそんなことをこぼした。
言われてみれば、おそ松たちと最後に同じ部屋で寝たのは、10年以上前のことだった気がする。
「……そうだね。……カラ松、おそ松たちについてどう思う。」
「……6人で1つ、だよなあ。……もしAを含めた7人で一緒に産まれたなら、良かったのにな。」
「そんなこと言ったって無駄でしょう。……ずっと前からカラ松の扱いが酷いなって、台所から見てたんだよね。カラ松だけじゃないよ、おそ松はクズだなとか、チョロ松はまともだなとか、一松は怖いな、とか。……無理、してない?」
カラ松の喉が震える音がした。
あっ、と言葉にならない声を発した後に、静かに呟いた。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時