20.「静寂と孤独」 ページ22
階段を駆け上がって早々に寝巻きに着替え、顔を洗い布団へ潜った。
まだ寝る気分ではなかったが、下へ降りるのも気が引けるし、なにより体を休めておいたほうがいいだろう。
ふと、スマフォのSNSアプリを開く。
プロフィール欄の「招待中」のところに、ひとつのグループがあった。
「《松野家兄妹》……。」
一昨年の春くらいに招待されたものなのだが、なんとなく参加する気になれなくてずっと放置していた。
きっと十四松はこのグループに連絡を入れていたのだろう。
「……アホらし、さっさと寝ないと。」
きっとおそ松たちは6人でくっついて寝るのだろう。
いいなあ、暖かそうで。
私にも妹がいたら、くっついて寝ていただろうに。
それでもって、大切にしていただろうに。
そうして、「ありがとう」と言われるように、身の回りのことはなんでもやってあげて、お母さんみたいに優しくしてあげて。
きっと勉強が苦手だろうから、苦手な教科をわかるようになるまでちゃんと教えてあげよう。
そうして、もし遊び友達ができなかったら、私が遊んであげるんだ。
何をして遊ぼうかな。本を読む?飛行機の模型を作る?それとも、キャッチボールかな。
兄たちと友達1人を呼んで、9人で野球だってできるよ。なんたって兄たちは六つ子なのだから。
六つ子な兄がいるってクラスメイトに言ったら、きっとモテモテになれるよ。
私は言ったことなかったけれど。
会ってみたいって言われるんだろうなあ。
すごいねって言われて、みんなからチヤホヤされるんだ。
どれもこれも、私にはやってもらったことのない、妄想のお話。
兄たちに、そんな風に愛されてもらえてたら、もっと違ったのかもしれない。
きっともう一人妹がいたら、兄たちは諦めてたかもしれない。
養子でいいから欲しい、と何度思っただろう。
おそ松が養子に連れられて行ったときは、思わずたった一人で喜んだ。
だけれどお母さんのために、泣くふりをした。
でも結局戻ってきたんだ。「寂しくなったから」。
その後の夜ご飯でも、私の居場所はなんとなく無くて。
寝る前にも関わらず涙を流してしまう夜は、もう何度目なのか。
私がどんなに泣いても、どんなに喚いても、誰も来てはくれないし、慰めてももらえない。
こんなの、ただの悲劇のヒロインごっこだろうか。
「要らない子」というのも、ただの建前なのだろうか。
そう静かに考えているうちに、深い眠りへと落ちていった。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時