2.「ジュースの溢れたコップに一杯」 ページ3
2.「ジュースの溢れたコップに献杯」
それから何年か過ぎ去った日のことです。
私も兄も中学へ上がり、制服を身につけるようになりました。
それまで個性なんて全くなかった兄6人はそれぞれのアイデンティティーを確立したのか、それぞれまるで別人のように変わっていきました。
そして何より、兄弟関係を意識し始めて、兄を「兄さん」と呼ぶようにもなりました。
おそ松は長男らしさを。
カラ松は誰かを演じる力と心の強さを。
チョロ松は真面目さと一途な心を。
一松は人思いな心と面倒見の良さを。
十四松は異常なまでの明るさととびきりの優しさを。
トド松は可愛らしさと女の子らしさを。
それぞれ手に入れ、それぞれに光が当たり、それぞれが光によって輝きだしました。
ですが、私はどうでしょう。
面倒臭がりで、協力することが嫌いで、人と関われない人間。
酷いことを言ってくる兄たちを未だ嫌いになりきれず、愛していたいと思ってしまうお人好し。
損するばかりで得なんてない。
つまり、私は完全に引き離されてしまったのです。
兄に、あの六つ子に。
逆に、スタートラインが2年も違ったのにここまで追いつこうと努力していた私が悪いのでしょう。
「……ただいま。」
控えめにドアを開けて、家に入る。
小5になったあたりから、自然とそうしなきゃって思い始めた。
「要らない子」と言われてかなりショックだったから、要らないやつなりに控えめに過ごそうと考えたからだ。
なんで要らない子なのかは私にもよくわからない。
きっとタチの悪い冗談だろう。
「おかえりなさい、A。……大丈夫?最近ずっと元気がないけれど、クラスで何かあったの?」
リビングに少しだけ目配せすると、6人の顔があった。
みんながみんな、私を見ている。
邪魔をするタイミングを、伺っている。
ここで「友達と喧嘩した」とでも言おうものなら、すぐさま邪魔をしにくるだろう。
「…なんも。疲れてるからあんま話しかけないで、勉強したいし。」
そう冷たく返事すると、悲しげな声で「…そう」とだけ聞こえてきた。
私は静かにリビングへ入り、隅の方で勉強道具を広げる。
本当はちゃぶ台でやりたいが、部屋のど真ん中で勉強する気にもなれないし、なにより兄たちが居るから抵抗があるのだ。
最近は部活がないのか、全員ずっと家の中に居るから勉強がしづらい。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時