16.「今時」 ページ18
一松兄さんが、Aを泣かせた。
トド松が、一松兄さんを怒鳴った。
「…っ一松兄さんッ!!!どうすんの?!A行っちゃったよ?!こんな寒い中、薄着で!!」
「……はっ、だからなんだよ、俺には関係ないじゃん。」
二人の喧嘩はどんどん酷くなっていく。
いつもの喧嘩なら僕が止めてるけど、今は喧嘩を止めるよりも先にやらなきゃいけないことがある。
僕はひとり、たったひとりで家を出た。
そうして、勘一つでひたすらに走った。
いや、追いかけた。
「ちょ、十四松?!お前までそんな格好して出て行ったら二人とも風邪引くから!戻ってこい十四松ーッ!!」
後ろから必死そうなチョロ松兄さんの声がするけど、今ここで戻ったらAに追いつけなくなっちゃうかもしれない。
こうなったのは僕の責任でもあるから、明るく言い返せなかった僕のせいでもあるから。
話そうとしてる時に限って声が出ない。口が開かない。
それが僕の悪い癖。
あの時だって、さっきだって。
僕が言いたいことを言えないから、やめてって言えないからこうなるんだ。
ほんとはAに、仲直りできないか頼もうと思ってた。
いつ帰ってくるかわからなくて、それが怖くて、どんぐりで気を紛らわせてる間に丁度帰ってきて、でも緊張して最初は声が出なくて。
目一杯声を張り上げて、どんぐりを手渡したつもりだった。
でも、Aはすぐに受け取らないで、どんぐりを床に置いた。
どんぐり、嫌いだったのかな。最初はそう思って、あっ、しまった。って後悔した。
でも、すぐにAの手は僕のパーカーの袖に伸びてきて、くるくると捲りはじめた。
そのことが嬉しくて、もしかしたら仲直りできるんじゃないかって一人で舞い上がってた。
「邪魔かなって思っただけだから」。
その言葉は僕の服の袖についてじゃなくて、Aの存在について言ってるようにも聞こえた。
だから、「邪魔じゃないよ」って答えた。
むしろ、必要としてるんだよって言いたかった。
でも、やっぱり声が出なかった。
結局一番言いたかったことはいえなくて、何で渡されたの?って首を傾げられそうなことしかできなかった。
だから、今度はAを見つけてちゃんと言う。
仲直りしようって、仲良くしたいって。
こんな馬鹿みたいに笑うことしかできないお兄ちゃんでごめんねA。
お星様、どうかお願いです。
僕の気持ちが、Aにちゃんと届きますように。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時