11話 ページ31
優しい彼女の事だから、これからもお店をご贔屓に、なんて粋なお願い事をしてくると降谷は思っていた。
そのお願い事は、降谷の想像の斜め上をいくもので
「またハムサンド食べたいです。」
ましてや、降谷に向けられたものではなかった。
降谷は固まる。
「ハム、サンド…」
唯一動いた口が、彼女の言葉をそのまま繰り返した。
降谷が今まさに、その安室透の事を謝ろうとしたタイミングで、まさかAの方から切り出されるとは思いもよらなかった。
ダメ押しとばかりに、Aは、してやったり、という様な顔で笑って告げる。
「ダメ、ですか?」
混乱しきったこんな時でさえ、首を傾げる仕草にまたグッと男心が燻られるものだから、惚れた弱みというものは恐ろしい。
(一体、いつから…)
彼女との時間に気が緩み、完璧に演じきっていた筈の安室に何か綻びが生じていたのか、それとも最初からわかっていた上であの対応だったのか、降谷はますます混乱するばかりだ。
降谷の意識はすっかりそちらに向き、実はAが意図的に降谷に謝らせない様にしている事になど全く気付きもしない。
男というものは、昔からそうなのだ。
惚れた女の前では、どんな切れ者だろうが、エリートだろうが、男はただの男に成り下がる。
降谷は覚悟を決めた。
余計な言葉は要らない。
「いつでも。
…ご希望とあらば、何度でも。」
女性と向き合って話をするのは、こうも気恥ずかしいものだっただろうか。
偽りの姿である安室透として出会った毛利蘭や、ポアロの同僚であった榎本梓とは訳が違う。
桜木Aは、降谷零として出会い、降谷の顔と名前を知った上で安室透と出会った。
どのタイミングで気付いていたのかはまだ謎だが、Aは怪しむこともなくすんなりと安室透を受け入れた。
『昔からその辺の事情は、兄から耳にタコが出来るほど聞かされていたので…』
きっとそれも、彼女の本来持つ素直さと、彼女の兄からの入れ知恵のおかげだろう。
『あんなに真っ直ぐな奴らだから、誰か一人位、警察庁にいってもおかしくないって。』
『なぁ、俺の妹と付き合わねぇか⁉』
「警察官より、占い師の方が向いてるんじゃないのか」
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - 休校さん» 休校様、返信遅れて申し訳ありません!コメント有り難う御座います(^^)上から目線だなんてとんでもない!感想だけでも嬉しいのに、面白いと言って頂けて本当に感激です。この作品は特に、言葉を大事にしたのでより嬉しいです!また読んで貰えると跳んで喜びます笑。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
休校 - とても素敵でした!今まで降谷さんのお話をはしごしてきたのですが、一番面白かったです。(上から目線不快に思われたら申し訳ない! 本当に、本当に、言葉といい、センスといい、ストーリーといい、弟子にしてください笑また、見にきさせていただきます。お疲れ様です (2020年6月15日 21時) (レス) id: e4ab2b5df5 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - 藍さん» 夜分遅く&返信遅くなり申し訳ありません。テーマは幸せ、だったのでそう感じて頂けて何よりです!文字数多くて読むの大変だったかと思いますが、それにも関わらず感想を下さり、本当にありがとうございます!これからも頑張れる様に頑張ります!笑。 (2019年5月13日 1時) (レス) id: f628ddcf07 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 読ませて頂きました!とっても綺麗なお話で、最後の幸せすぎる展開にお恥ずかしながら涙しちゃいました…笑これから続編も読ませていただくのですが、どうしても感想を伝えたくて仕方がありませんでした!これからも頑張って下さい!応援してます(*´ω`*) (2019年5月6日 23時) (レス) id: 8bfd8d1747 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ノンノンさん» 勿論覚えております^_^コメントありがとうございます!桜木美咲…!桜の木が美しく咲く、すごく日本らしくて素敵な名前に、自分でちょっとグッジョブと思ってしまいました笑。ノンノン様のコメントで私は幸せな気持ちです^_^本当に感謝です! (2018年8月2日 2時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月6日 0時